Articulate Systems, Inc. 1989年 

Voice Navigatorはその名の通り、音声によりMacintoshのオペレーションを実現する音声認識テクノロジー製品である。「音声認識」といえばいまやIBMのViaVoiceが知られているがVoice NavigatorはMacintosh用の本格的な音声認識システムとしては最初期の製品であった。 
voicetrain
システムはソフトウェアとレターサイズほどの大きさで厚さが5cmほどの四角い樹脂製ハードウェアとで構成されていた。 
私が最初にVoice Navigatorを知ったのはやはり米国のMacWorldExpo会場においてだった。それほど大きなブースではなかったが赤い色調で統一されたそのブースは人、人、人でいっぱいだった。 
現在でも音声認識技術は多くのユーザーにとって大変魅力的なテクノロジーだし近未来を彷彿とさせるアイテムに違いない。Voice Navigatorの登場はすでに10数年前なのだから当時の我々がどれだけこの種の製品に期待を寄せたかはご想像いただけると思う。 
Voice Navigatorの役割はいわゆるディクテーションという発声した音声をそのまま漢字まじりのテキストとしてコンピュータに入力するものではなく、ファインダ上のオペレーションはもとより、特定のアプリケーションの利用に際してそのオペレーションを音声で行うことが目的だった。したがってその利用に際してはベーシックなワードとは別に目的のアプリケーション毎に用意されたワード類を読み込んで調整する必要があった。 

さてVoice Navigatorには別の思い出もある。1990年か1991年だったか…池袋のサンシャインで開催されたアップルコンピュータ主催のイベントにおいて私たちのブースの隣がVoice Navigatorの国内代理店ブースだった。 
Voice Navigatorは音声認識を売り物にするのだからそのデモはどうしてもマイクロフォンを使って声を張り上げることになる。しかしその隣で黙々とソフトウェアのデモを行っている私たちにすれば正直「ウルサイ」の一言だった(笑)。デモのサウンドかマイクロフォンの音にかき消されてしまうのだ。 
しかし後に耳にしたところによればその代理店の社長は過労で亡くなられたという。勿論直接お付き合いがあったわけではないので詳細は分からないがブースの前で熱心にVoice Navigatorをデモしていたその社長の姿をいまだにおぼろげながら覚えている。 
本「Macintoshソフトウェア博物館」でご紹介する様々なソフトウェアやハードウェアにはそれぞれ多様な歴史があるがそれらを取り巻く我々人間たちやその生き様にも歴史があることを私は忘れてはならないと思っている。