
これまで様々な製品を紹介してきたがこれほどレポートが難しい製品はない。なにしろ相手はこのクラスで世界初の裸眼で扱える三次元…3Dカメラなのである。しかしどのようにがんばったところでその魅力をウェブではストレースにお伝えできない。困った…(笑)。
富士フイルム製のデジタルカメラ「FinePix REAL 3D W1」は単体で3D写真が撮れ、液晶モニタで裸眼の立体視ができるという世界初の製品である。しかも写真だけでなく何と動画撮影も3Dが可能なのである。
さて最初から何であるが…私はこの手のガジェットにいたく弱い。
若い頃から立体カメラ(無論銀塩アナログカメラだが)を愛用し、立体ビューアーを自作工夫したりと楽しんできた。
ただし今回の「FinePix REAL 3D W1」は自分でもその実用性を少々疑いながら何度もウェブからの注文を「ポチッ」とする直前で止めたことか(笑)。しかし、結局物欲には勝てずいま手元にある(爆)。
※「FinePix REAL 3D W1」パッケージ
ところで我々人間が立体感を感じるのは、両眼でものを見る際に角度や距離に違いを生じる「両眼視差」によるものと考えられている。したがってこれまでにもその理窟・効果を活かして立体撮影のためのカメラや立体視のためのビューアーなどが考えられてきた。
実際にどこにでもあるデジカメでも工夫ひとつで視差の違う2枚の写真を撮り、それを左右に適宜ならべて例えば交差法といったやりかたで視差を合わせると裸眼で立体視が可能となる。しかし難しくはないものの面倒なのと多少のコツが必要なのだから、余程この種のモノが好きでないと自身で撮影から始めようとする人は少ないニッチな世界でもある。
※スライドバリアを開けた「FinePix REAL 3D W1」。左右に2基のレンズがある
こうした立体写真の歴史は意外に古くそれは1838年、イギリスの物理学者チャールズ・ホイートストン卿(1802~1875年)により発明されたが、10年後の1848年にはデイヴィット・ブルースター卿によりステレオ2眼カメラが作られている。
さらにホイートストン卿は帯状にした立体写真をドラムに装着してレンズの付いたビューアーを覗くことで立体動画の鑑賞用装置をも作ったという。
先人たちは写真というモノを眼前にした瞬間からそれをより我々の両眼が見ている知覚に近いものにしたいという願望を持ったものと思われる。
それほど我々は立体的な映像というモノに対し根源的に拘ってきたのである。
ただし「何故」と言われるとその回答を出すのは些か面倒だ。そもそもがこの種の立体視は文字通りの意味で完全な…我々が日常見ている三次元の知覚ではなくいわば二次元平面の情報に奥行き感を追加したもので、2.5次元映像とか2.1次元映像だという人もいるくらいだから…。
それ以上に問題なのは果たして3Dカメラ、3D写真に投資するだけの価値があるのだろうか…ということだ(笑)。
無論大規模なエンタテインメント施設でこの種の設備を整え、魅力的な映像を使えば大勢の人たちを楽しませることはできる。しかしコンシューマ用のデジタルカメラに果たして3D機能が搭載されたことで何が変わるのだろうか…。
すでに手元に「FinePix REAL 3D W1」があるのに馬鹿げた話だが、そうしたポイントが明確になっていないからこそこれまで3Dカメラの世界はニッチでしかなかったのだろうと思う。
写真が立体に見えたところでその世界に入り込めるわけではないし、そこにあるモノに手を触れることができるわけでもない。あえて言ってしまえば「立体のように見えるだけ」だ。
その上にこれまでは3D写真を作るにも、そして見るのも特別な機器を必要としたり、特殊なメガネをかけたり、左右の眼で2枚の写真を別々に凝視するといった苦行を強いられた。
果たしてそんなことまでして映像を立体視する意味があるのだろうか…。
ということで所詮3D写真は “作り物” であり現実を彷彿とさせるものではないという意見もある。そして意外なことにこれまで立体映像の魅力やテクニカルなことに関して語られることはあったものの、映像が立体化されることにどれほどの意味と魅力が生まれるのか…といった点について真剣な検証はほとんどないように思える。
まあ「百聞は一見にしかず」でともかく見ればその人にとっての価値はすぐに分かるだろうが…(笑)。
それにこれまた水を差すようだが、「FinePix REAL 3D W1」の価格は1000万画素のCCDならびにフジノン光学式3倍ズームレンズをそれぞれ2基搭載しているために価格は当然のことコンパクトデジカメとしては高めである。
そして普通の高画質な写真を撮るなら他に選択肢はいくらでもあるわけで「FinePix REAL 3D W1」は文字通り3D写真のための専用カメラなのだから、その3D写真がどれほどのものでかつユーザーにとって有意義なのかどうかは重要なポイントであろう。
「なぜ3D写真なのか?」という疑問にこの場で即結論を出すことはできないが「FinePix REAL 3D W1」を使いながらその根源的な意味にも迫っていきたいと思う。
さてこの「FinePix REAL 3D W1」は今年8月8日に発売されたばかりの新製品であり、その前後では確かに大きな話題になったから様々なメディアに取り上げられた。しかしメディア各社の通り一遍のスペック紹介や使い方はあちらこちらで確認できても一般ユーザーからの使用感やレポートが至極少ない。
そう不思議に思っていたが、いざ自身が「FinePix REAL 3D W1」を手にしてみると、あらためて「こりゃあ紹介するのは大変だ」と感じる…。
なにしろ「ほら、こんなに自然な立体感で映像が撮れますよ」といったところでウェブ上ではその魅力をお伝えできないのだから(爆)。
※背面の2.8インチ液晶モニタは肉眼で立体視が可能。実際には愛犬の後ろ足が前に飛び出して見える!
では「FinePix REAL 3D W1」の立体すなわち3D撮影の仕組みはどういうものなのか…。それは「FinePix REAL 3D W1」本体を見れば一目瞭然であろう。
レンズ保護ならびに電源スイッチにもなっているスライドバリアを下げるとそこには左右に2つレンズがある。
「FinePix REAL 3D W1」には2つのレンズと2基のCCDが搭載され、両方のCCDを同期させる高精度な制御システムにより左右で2枚の…まったく同じ瞬間を取り込むことができるのだ。そして映像系が得た情報を画像解析し、瞬時に3D合成する機能を実現しているわけ…。
ユニークなのは撮影だけでなくカメラ本体にある液晶モニタが裸眼で立体視を可能にしている点である。
「FinePix REAL 3D W1」にはライトディレクションコントロールシステムという左目・右目に届く光の方向を高精度に制御し、両目にそれぞれ別の画像を投影し、それにより裸眼のままで自然な立体感を得ることができる2.8型の液晶モニタが搭載されている。したがって「FinePix REAL 3D W1」1台で3D映像の撮影から表示が可能となる。
さらに別売で8インチの3D デジタル・フォトフレーム(FinePix REAL 3D V1)もあり、撮影した3D写真や3D動画を大きな画面で楽しむことも出来る。そして何と「FinePix REAL 3D W1」で撮影した3D写真から3Dプリントも作成できるというのだ!
無論3Dの写真だけでなく動画も撮影でき音声もステレオ録音が可能だから、私などはそうしたスペックを見ただけでワクワクしてくる…。
また「FinePix REAL 3D W1」は3D映像を撮影するだけでなく一般的な2D撮影もサポートしている。それも左右2つのCCDを活かし、1度のシャッターで例えば広角とズームといったまったく同じ瞬間の2枚の写真を撮影するとかカラーとモノクロ写真といった撮影を同時に可能にするツインカメラモードも持っている。
さて、そんな「FinePix REAL 3D W1」の立体映像はどんなものなのか、次回からの実践編をお楽しみに。
【参考資料】
・C.W.Ceram著/月尾嘉男訳「映画の考古学」フィルムアート社刊
■FUJIFILM 3Dカメラ FinePix REAL ブラック F FX-3D W1
■富士フィルム株式会社/FinePix REAL 3D W1