
Amazonで見つけた「DIGITAL RETRO」という大型本が届いた。本書は1970年代から90年代前半に発売されたパーソナルコンピュータの裏話や開発ストーリーなど「PCに関連する人たちの多くがインスパイアされる内容」という触れ込みで日本語版限定3000冊出版されたもの。Apple Lisaを含めて40種のレトロコンピュータが掲載されている魅力的な1冊である。
私はこの25年間、日常使用するパーソナルコンピュータはApple製品にどっぷりと浸かっているがそれ以前あるいは一時期様々なコンピュータに接してきた。適切な言い方かどうかはともかく、自分の中で多くのパソコンが淘汰されその結果Macが残ったといってよいだろう。
とにかく1977年に富士通FACOM L-kit8ワンボードマイコンを入手したのを皮切りに、コモドール PET 2001、カシオFX-9000P、シャープPC-1210、Apple II J plus、Apple IIe、EPSON HC-20、NE CPC-100、シャープ X1、IBM5550、NEC PC-8801mkII、Macintosh 128K、NEC PC-9801 F2、タンディ TRS-200、NEC-PC-98LT といった製品を使ってきた。
寿命が短かった製品もあるし、使いこなせなかった製品もあったが、すべての製品はその時代を代表する最先端テクノロジーであったし、強い自己主張を感じるものが多かった。
※私が使ったレトロマシンの一例だが、1981年に発売されたCASIO FX-9000P。メインメモリーにバックアップ電源つきのCMOS-RAMを採用したのが特徴
したがって1970年代後半から1990年代前半まで国内で手に入るパソコンのうち主な物は知っているつもりだ。その中で自身として実用となった製品は数少ないがほとんどがMS-DOSの世界だったからいわゆるOSとかソフトウェアに対する興味より必然的にその個性的なハードウェアに興味が向くのもやむを得ないことだった。
前記した製品も当然のことながら次々とパワーアップのための新しい製品が出てくるのだから、実際に手にしたマシンの数はそれこそ数え切れない…。ただしいま思うと不思議な感覚にとらわれるが、当時そうしたコンピュータは大変高価であったにもかかわらず不用となったものはほとんど顧みることなく廃棄したり人に差し上げたりし、コレクションのために保存しておこうといった気持ちは毛ほども起きななかった。
ひとつには新型は常に旧型の機能を包括しており、かつ新しい魅力やパワーを持っていたから、旧機種を取っておこうとする気持ちがわかなかった。そして正直それらを保管しておく場所、スペースがなかったことがいま考えると大きな要因だったと思われる。なにしろ数年経ったマシンはそのほとんどが粗大ゴミとしか認識されなかったのである。
しかし希代なもので、実物はすでに見ることが出来なくなったそれらの製品たちも記憶の中ではますます光輝いて思い出すことがある。なぜなら我々が現在使っている最新型のMacintoshにしてもパソコンとしてその基本的な仕組みは30年たっても変化していないからである。
ブラウン管から液晶に変わったとはいえ、また一体型かどうかはともかくモニタ画面と本体そしてキーボードで構成されている点はまったく同じである。そして私の現在の製品に対する思いは常々「パソコンは処理スピードが速くなっただけのものなのか?」という自問の連続だからでもある。確かにMS-DOSの環境からGUIへの変化は大きいものがあったが我々は相変わらずQWERTY式のキーボードを使いコンピュータと対峙している。
できることも昔とは格段に違うしそのクオリティもまったく違う。しかしパーソナルコンピュータはその普及の代償としてある意味ビジネス機器となってしまった。
PETを購入したとき、嬉しくてその大きめの図体を一晩枕元に置いて寝たこと、Apple IIの筐体をなで続けていたこと、毎朝Macintoshの電源を入れるとき「おはよう!」と声をかけたことなどなど現在の最新機種への思い入れとはレベルの違った扱いをしていたように思う。
そんな同じような思いをした方に本書は「あの頃の記憶」が生々しく思い出さすきっかけとなるに違いない。
本書は大型本の各4ページ毎にレトロコンピュータが丁寧に紹介されている。それらはMITS Altair 8800、Commodere PET 2001、Apple II、Tandy RadioShack TRS-80、Sharp MZ-80K、Atari 400/800などからApple LisaそしてNeXT Cubeに至るまで40機種が美しい写真で紹介されている。したがってこれらの機種を使った経験のある方は勿論、あらためてパーソナルコンピュータのルーツあるいは黎明期の製品を知りたいという方たちにとっても有益な書籍であろう。
ただし英語原本と比較したわけではないのでよく分からないが、日本語の解説に練れていない箇所が見受けられるし、具体的には触れないが原著者の思い込みと思われる記述もあり、内容の100%が事実だと受け取るべきではないことも念のため記しておきたい。