今更のiBook G3 Dual USB 700MHz 384MB 中古品入手

私は1984年1月24日にリリースした初代Macintoshから此の方、現在の最新機種であるM4 Mac miniに至るまで多くのMacintoshを手にしてきた。その間、CPUが変わったり、OSが変わるなどこれまた幾多の変化を身をもって体験してきた。それは趣味というだけでなく1989年にはMacintosh専門のソフトウェア開発会社を立ち上げたため、仕事となったからでもあった。


最大の変化は申し上げるまでもなくスティーブ・ジョブズがAppleに復帰後、MacintoshのOSがモダンOS…すなわちMac OS Xとなったことだった。ただし暫くは旧OS…MacOS9あたりは実務として手放すわけにはいかずにいたが、それも三年近く前には意識的に切り捨て、関連ハードウェアやソフトウェアなども終活という名の下に処分をした。

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※あらためてヤフオクで入手したiBook G3 Dual USB 700MHz 384MB。MacOS 9をインストール


一時はハードウェアにしてもオールド機種のコレクターかと思われ、多くのメディアから貸出依頼もあったが、個人的には収集したというよりソフトウェアを動かすためにハードが必要だった…というのが本当の所だったから処分もほとんど未練は無かった。
ということで最新のmacOSに専念したわけでそれ以前のMacOSとは縁を切ったつもりだった。

ところが、デジカメ最初期の記録は勿論、データバックアップのためにCD-Rに記録していた膨大なデータの整理をしようと思い立ったものの、肝心のCD-RがmacOS環境では読めないのである。また古い画像データの中にはPICTフォーマットも多く「残すか破棄か」を判断するにしてもまずは中身の確認をしたいと些か不本意ではあったがMacOS 9が正常に使える中古のマシンを手に入れる算段をすることになった。

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※ホワイトの筐体は経時変化で些か黄ばんでいるが機能に関係ないので良しとしよう…


MacOS 9環境のマシンは扱い易い事を考えノート型が基本だが、小型であることや洗練されたデザインをと結局 iBook G3…それもシェル型ではない製品をヤフオクで探した。
そもそもヤフオクでマシンを入手するにはそれなりのリスクを伴う。ただし大層なことをやらせようとしているわけではなくデータの確認が主な仕事なので多少の問題があっても仕方がないと覚悟の上だった。

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※Dual USB仕様だった


しかし結果 iBook G3 Dual USB 700MHz 384MBを落札したが、ラッキーだったと思われる。このiBook G3 700MHzはDual USB仕様であり2001年に発表された製品と思われるが、バッテリーは消耗していたもののACアダプターで問題なく起動し、液晶モニターもビネガーシンドロームは起きていなかった。
本体が黄ばんでいるのは機能に影響が無いので問題ない。そしてインストールされていたMacOS 9がトラブルなく使えれば目的は達せられるし内蔵のDVD-ROM/CD-RWコンボドライブもまったく問題がないようだ。

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※内蔵のDVD-ROM/CD-RWコンボドライブも問題なかった


しいて問題点を挙げるなら、液晶部のヒンジがいささか緩くなっているようなのとトラックパッドのクリック部位がチャタリングを起こしやすいということぐらいだ。
無論この状態がいつまで保たれるのかは分からないが、よき状態のマシンを手に入れることができ満足している。
そういえばこれと同じ製品をリアルタイムで購入し、オーストラリア旅行の時に持参した思い出が宿るが、一度手放した製品を再び手に入れようとは思いもしなかった…。
それはそれとして…自社開発アプリの主なものをインストールしてみたものの、言い訳めくがMacOSのオペレーションはもどかしいし、すでに25年近く触っていなかったこともあり、悲しいかな自社アプリも思うようにオペレーションできないので苦慮している…(笑)。



セミホロウボディ/エレクトリックギターを手にして!

現在、電子ピアノを楽しみつつ、新たにエレクトリック・チェロを始めました。そんな中、今回「Redid セミホロウボディ エレクトリックギター RD-100/Fホール仕様(ブラック)」を手に入れました。

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 自分でも節操がないとは思いつつ…長年弾き続けたクラシックギターを腱鞘炎とバネ指のために断念せざるを得ませんでしたが、右手の指が思うように動かないならピックを使えばよいのではないか、左手もクラシックギターのセーハが辛いなら、ネック幅が細めのエレクトリックギターでロックスタイルの握り方(シェイクハンドスタイル)にすれば弾けるのではないかと考えました。
また、これまでこだわってきたクラシックやフラメンコに加え、ポピュラー音楽やジャズにも挑戦してみたくなり、今回このギターを選びました。決して高級品ではありませんが、楽しむには十分であり、エレクトリック・チェロ用に手に入れたミニアンプも共有できるという利点があります。

セミホロウボディとは
 セミホロウボディとは、ネックから伸びる「センターブロック」を備え、その左右部分が空洞になっている構造のギターを指します。「セミアコースティックギター(セミアコ)」とも呼ばれ、エレキギターとアコースティックギターの特性を兼ね備えたサウンドが特徴でジャズやブルースなどに最適だと言われています。デザインは、1958年にギブソンが発表した世界初のセミホロウ・エレクトリックギター「ES-335」モデルを模したもののようです。

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スペックとしては、トップ&バックにバスウッドを採用し、ネックはカナダ産ハードメイプル、指板はローズウッド。3ウェイトグルスイッチに加え、2つのボリュームと2つのトーンノブを備えています。そして高さは約108.2cm、幅が52.3cm、奥行き11.9cmほどであり重さは4.8kgの製品です。

ギターを手にしての感想
 実際に手に取ってみると、想像以上に美しい仕上がりでした。Fホール部分も丁寧に処理されており、ボディのバインディングや指板のインレイも高級品ではないものの、美しく仕上げられています。また糸巻きの機構も滑らかです。

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クラシックギターからの転向について
 このギターを手にしたことを知った友人たちは、「クラシックギターとエレキギター(特にジャズ)は奏法が大きく異なる。ゼロから始めるのは大変では?」と心配してくれました。しかし、実は私は若い頃にエレキギターで舞台に立った経験があります。

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就職後、クラシックギターを弾き、フォークソングを好むことが知られたのか、総務課に配属された同期のK君から「会社公認バンドに加わらないか」と誘われました。そして、リードギター兼ボーカルとして、夏のビヤパーティーやクリスマスのダンスパーティーなどで演奏していました。
ベンチャーズやスプートニクスを演奏することもあれば、「ラブユー東京」といった歌謡曲を手掛けることもありました。とはいえ、それも50年も前の話。その経験がそのまま役に立つとは思いませんが、少なくともピックで演奏することには違和感がありません。
ピアノ、チェロ、そしてギターと、三つの楽器に手を出せば、どれも極めることはできないでしょう…。しかし、時にピアノの前に座り、時にギターを抱える――そんな時間そのものが楽しく、喜びに満ちています。そもそもこの年齢になって「上手くなろう」と気負うつもりはなく、ただ純粋に楽器を奏でることを楽しんでいこうと思っています。






ChatGPT4-o対応ドッキングステーションHiDock H1E とは?

現在あちらこちらで広告が目に付くHiDock H1Eというガジェットを買ってみた。これはAI ボイスレコーダー機能を持ちChatGPT-4o連携でワンタッチ文字起こし、自動要約をしてくれて複数の話者を識別するという優れたデバイスである。さらに8-in-1 USB-C ドッキングステーションとしても秀悦だ…。


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※M4 Mac mini環境で活用することに…


この製品について説明・解説するのは些か難しいし正直面倒だ(笑)。それは機能が豊富ということだけでなくユーザー側の求めにより価値がかなり変わると思われるからだが、あえて簡単に言うなら文字起こしと自動要約機能を搭載したAIボイスレコーダーである。
ということでまずHiDock H1E の主な機能をご紹介しよう…。

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※パッケージ


①USBドッキングステーション
②マイクロフォン
③スピーカー
④音声録音機能
⑤ノイズキャンセリング機能
⑥録音した声の文字起こし
⑦ChatGPT-4oによる57言語対応の文字起こしと要約サービス
⑧専用ワイヤレスイヤホン付属

と、箇条書きにするとこのようなことになる。そしてこれらの機能は有機的あるいはシームレスに機能しZOOMやFaceTimeといったアプリによるオンライン会議に無類の能力を発揮する…。
では主な機能の概要を記してみる…。

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※HiDock H1E の構成


■音声録音および文字起こし
例えばZOOMを使い5人で会議したり何らかの打ち合わせをする場合でもHiDock H1Eのボタンひとつ押せば周囲のノイズを気にせずクリアな録音ができるだけでなく、5人を識別した文字起こしができ、終了後にその要約までやってくれる…。当然後で言った言わない…といったトラブルも起き得ない。

ということで、在宅の仕事でオンラインによる会議や打ち合わせの多い方には必須のアイテムと思われる。なにしろ我々は30分程度の会議だとしてもその内容を正確に記録し分析し、話しの要点をまとめるという作業は得意ではないからだ…。
無論会議や打ち合わせだけでなく1人でアイデアを練ったり情報のまとめ、あるいは思いついたアイデアなどを記録しておくにも威力を発揮するに違いない。

さて、文字起こしの仕組みはHiDock H1Eで録音したデータはあらかじめセットアップし紐付けされたHiNotesというWebアプリに渡される。HiNotesは当該音声データを「文字起こし」するか「文字起こし&要約」するかを選べ、かつChatGPT-4oによる57言語対応の文字起こしが可能。すなわち例えば日本語で会話したデータでも英語で文字起こしをやってくれる…。

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※FaceTimeによる二人の会話を録音し文字起こしと要約を試みた


またHiDock H1E のスピーカーはクリアな音質でBGMを流すのもアリだし内臓のマイクも優秀なノイズキャンセリング機能によりキーボードの打鍵音やペットの鳴き声、外から入ってくる騒音などを効果的に軽減してくれる。

■要約機能機能
テキスト化した文章の要約機能はHiDock H1E の目玉と言ってよい。これはChatGPT-4oによる文字起こし後の要約時はClaudeAI 3.5とChatGPT 4-o の2種類のAIエンジンから選ぶことができ、20種類以上のテンプレートから選択することで最適な要約内容を作成できる。

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※要約はClaudeAI 3.5 とChatGPT 4-o の2種類のAIエンジンから選ぶことができる


ただしオンライン会議などで複数人の場合でも話者を認識して「誰の発言」を区別してくれる機能もあるが、これはオプションのプロメンバーシップに加入しなければ使えないので注意を要する。

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※私は取り急ぎ1200分限定のプロメンバーシップに加入した


注意と言えば、HiNotesはWebアプリだがSafariではなくGoogle ChromeでなければならないのはSafari派の私としては少々厄介だが仕方がない…。

■8-in-1ドッキングステーション
HiDock H1E はドッキングステーションとしても秀悦だ。背面には65W Type-C急速充電ポート、4K 60Hz HDRのHDMI2.0ポート、最大5Gbps USB Type-C 3.2がひとつとUSB 3.2 Type-Aポートが2つ、1Gbpsイーサーネットポートが備わっている。

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さらに正面向かって左側面にはBluetoothボタンと18W USB -C 3.2急速充電ポートがある。
したがって机上回りがかなりすっきりと整理できるのではないか…。

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■ワイヤレスイヤホン付属
プライベートな通話には附属のオープンイヤーワイヤレスイヤホンを使用できる。このイヤホンを充電器から外すと自動的にマイクとスピーカーはこのイヤホン側に変わる。したがって長時間のウェブ会議中にも自由に移動することができるし相手の話の内容を回りに聞かせたくない場合にも有用だ。

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■プライバシーを最優先
HiDock H1E による全ての録音ファイルはハードウェアに保存され、ユーザーの許可なしで他者からのアクセスは出来ない。文字起こしと要約はChatGPTおよびClaudeのAPIサービスにより行われて、データはAI学習に使用されないとのこと。全てのデータはSHA-256とRSAによるエンドツーエンド暗号化をうけ、多岐にわたるコンプライアンスと規制基準に対応しているという。

■ChatGPT 4-oについて
HiDock H1E と連係して使うChatGPT 4-oは生涯使用回数制限なしで無料で使えるのが特徴。
なお "4-o" の o とは「omini」という意味とのことで、"あまねく" という意味を含み、マルチモーダルとなった新たなGPTと多言語に対応したことを指す意図が含まれているようだ。

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※筐体は安っぽさはなく、精緻な作りとなっている


■総評
私自身、このHiDock H1E の全容をやっと把握したというところであり、まだ未知の部分もあるかと思う。しかし知れば知るほど実用的で有用な製品だと思っている。
後はユーザーのアプローチ次第ではないだろうか…。
またこのHiDock H1Eはドッキングステーションとしての拡張がより豊富な上位版もあるが、HiDock H1Eはコストパフォーマンスの点においても秀悦な製品である。

HiDock H1E



千歳埋蔵文化財センター所蔵の縄文動物形土製品を3Dプリンターで造形

昭和51年 (1976) 、新千歳空港建設時に発掘された美々4遺跡出土の縄文動物形土製品(重要文化財)の3Dデータ(.3mf)を千歳埋蔵文化財センターおよび公立千歳科学技術大学/理工学部情報システム工学科(特任教授)地域連携センター副センター長、曽我聡起先生の計らいで特別に貸し出していただいたので早速実物大のサイズで3Dプリンターを使い造形に挑んだ…。

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※新千歳空港建設時に発掘された美々4遺跡出土の縄文動物形土製品(重要文化財)を3Dプリンターで…


長いお付き合いをさせていただいている前記曽我聡起先生のFaceBookでこの縄文時代に作られたという土製品の存在を知り、縄文土器類に興味がある一人としてその形状に興味を持った。
実物といっても複製だそうだが、それは千歳埋蔵文化財センター(https://www.city.chitose.lg.jp/95/95_169/95_169_915/95_169_915_03/)に展示されている。寸法は約31.5cm╳9.5cm╳16.5cmほどである。

3Dプリンターは信頼しているBambu Lab A1を使ったが、そもそもビルドボリュームは256╳256╳256mmが限界なので綺麗にそれも分割で無く一発で造形するために専用スライサー上でしばし模索を続けた。
データは不思議な形をしているだけでなく両面合わせて四ヶ所の穴があり、本体は空洞である。
サポート材は不可欠ながら構造上空洞にサポートを使ってはそれを取り除くのは至難の技となる。勿論四つまでのフィラメントを使えるAMS lite システムがあるからサポート部のみ水溶性PVAフィラメントを使い、造形後水で溶かすという手法も考えたが、扱い易いフィラメントではないのでまずはPLAフィラメント一種で挑戦してみることに…。

繰り返すが3Dプリンターの造形サイズの限界が256╳256╳256mmなのでモデルを単純に縦横に置いては飛び出してしまう。それ以前にこのモデルの形状から考えて単純な位置関係では正常にプリントができないと判断した。
色々と考えた結果、サポートは膨大になるにしてもベッド上からを基本としてモデル内部にはなるべく作らない角度を模索した。
またベッドの対角線上に頭と思われる方を下に大きく角度を付けてスライスした結果目標の長さ31.5cmを一度に造形する目処が付いた。

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※一発造形を考慮しモデルの置き方を模索した


スライサーの情報に寄れば造形時間は19時間31分とのこと…。短い時間ではないが一昔前の状況を考えると隔世の感がある。
ともかくテラコッタ風の味のあるカラーのフィラメントでプリントを初めてみた。
結果、嬉しいことに問題も生じず造形できたし膨大なサポートもそんなに苦労なく外すことが出来ここに造形は完成した。

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※実寸大でプリントが完成した!


ちなみに前記した曽我先生の教室では「美々4遺跡出土」ということでこの縄文動物形土製品に「ビビちゃん」と愛称をつけている(笑)。
さてこのビビちゃん…一体何を表しているのだろうか? 他の多くの縄文土器などを見ても大きくデフォルメした表現があるようだし、写実的に造形したものではないと思うが、それにしても羽ではなく手らしきものが両側にあることから鳥類ではなさそうだ。
また両足の間…股らしき箇所に大きな穴が空いていることなどから、こちらがいわゆる正面と考えて良さそうに思う。
だとすれば、カモノハシ、ラッコ、あざらしといった哺乳類なのだろうか。あるいはすでに絶滅した動物なのか…。

今ひとつの謎は、このビビちゃんの用途というか、何の目的を持って作られたのか…ということだ。単に形を似せていわゆる似せ型を作ったとは思えない。
まったくの素人が考えたことだから奇想天外の発想だけど、ひと目見た印象は古来から仏法や戦陣等に利用されていた「法螺貝(ほらがい)」的な使い方をしたのでは…と思った。両面合わせて四箇所もの大きめの穴があることから「容器」ではないだろう。
あるいは穴の一部から紐で縛った小石などを内部に吊り、本体を振ることで鐘とか鈴的な音を出すアイテムだったかも…。ビビちゃんは焼き物だからして意外によき音が出たのかも知れないし、だとすると後世の銅鐸に繋がる発想なのか…。
さらに穴の一部に例えば笹の葉などを加えていわゆる笛のような使い方ではないか…と思いは膨らむ。
そしてもしかしたら楠や桑などの木材でできて口に煩悩の珠をくわえている魚板あるいは木魚を連想した。
魚板は時刻を知らせる鳴り物なので、下腹に裂け目があり、中は空洞だそうだし魚板を叩くのは、体内から煩悩を吐き出させるという意味合いもあったそうでこのビビちゃんも何らかの祭事に使われたのだろうか。

いまひとつ気になる事がある。それは正面と思われるちょうど両足の股部位がT字型に大きく開けられていることだ。この空間は他の三つの穴が単純な円であることを考えればなにか意図した意味があると考えなければならないのではないか…。
股間は男性にとっても急所であるが、縄文土器や土偶の類には女性を象ったものが多いからこのビビちゃんもなんらか…例えば安産祈願のため…といった目的があったのではないか。
とはいえ胸が膨らんでいる…といった形態的な女性的特徴はないのだが…。

ともあれ、長い間3Dプリンターと格闘してきた一人としてこの難しいモデルを一発で造形できたことに些かの自信を持ったしBambu Lab A1の凄さをあらためて認識した次第。




爺さんとチェロは似合う?〜エレクトリック・チェロ始めました

現在、なかなか上達しないが電子ピアノと時にハーモニカで音楽演奏を楽しんでいる。腱鞘炎のせいで断念したギターやリュートだが、弦楽器を手にしたくてうずうずしているもののできないものは出来ないので諦めるしか無いが、とある楽器店でチェロを持たせてもらったら左手は意外に押弦しやすいことに気がついた。無論右手は弓を保持するわけでギターやリュートのように指を動かす必要はない…。


まあいきなりチェロといっても驚かれるかもしれないが、実はかなり以前から興味を持っていたのである。その魅力の第一は音色である。
落ち着いた音色でチェロの音域は人の声に最も近いとも言われているからかその音楽は心地よく耳に響くからである…。どうにも近年はキンキン、ガンガンの音楽は好みではないのだ。

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※エレクトリック・チェロが届いた


しかし…である。チェロと言う楽器を扱うのはなかなか面倒そうだ。第一サイズが大きく重いこと。ギターのように手軽に…と言うわけにはいかない。そしてなによりもその音はマンションの一室で練習するには適さないからである。
無論消音のための器具もあるが、それでもエンドピンをフローリングに立てれば振動はかなり伝わるという。まさか防音室が作れる訳も無いしどうしてもチェロを練習したければ選択肢はひとつしかない。それは、いわゆるエレクトリック・チェロ(サイレント・チェロ)…すなわちエレキギターのようにアンプに繋げば大音量が出るが、素のままの演奏なら音が大幅に軽減されるしヘッドフォンによる演奏も可能な楽器だ。
ちなみにエレクトリック・チェロをという響きよりサイレント・チェロの方が好きなのだが、これはYAMAHAの登録商標とのことだ。
とはいえ、良い事尽くめではなくネット検索で情報を集めると「初心者にはエレクトリック・チェロは勧めない」とか「あれは玩具だ!」という演奏家もいる。それは見かけ上のサイズは実物のチェロと同一のようでも仕組みが著しく違うため、音色の変化や保持の仕方、姿勢が定まらずにいわゆる悪い癖が付きやすいという理屈のようである。

なるほど、そうしたあれこれはチェロの経験がない私でもある程度理解できるが、だからといってチェロ入門を狭き門にしてしまうのはどうかとも思う。長年クラシックギターを使ってきた私にしてもエレキギターに向かって「お前はギターではない」などと思ったことはない(笑)。
まあ、チェロで一流の音楽家を目指す人ならおのずと環境も理想的な場に身を置くことも重要だろうが、あくまで趣味で…という多くの人たちにはエレクトリック・チェロの存在無くして手軽にチェロを楽しむことは不可能に違いない。
さて、私はといえばチェロを楽しむにはエレクトリック・チェロしか選択肢はない。それにこの歳で究められるとは思っていないし、ただただ楽しみたい訳だからと迷わずエレクトリック・チェロの安物を手に入れた。

■チェロという楽器
チェロという楽器はヴァイオリン属の弦楽器の一種であり、ヴィオロンチェロ(イタリア語: violoncello)の略称だという。
チェロは西洋のクラシック音楽における重要な楽器の一つで、オーケストラによる合奏や弦楽四重奏、弦楽五重奏、ピアノ三重奏といった重奏の中では低音部を受け持つ。また、独奏弦楽器としてはヴァイオリンと並んで重要であり、多くのチェロ協奏曲やチェロソナタが書かれている。またポピュラー音楽においては決して一般的ではないが、しばしばポップスやロックの曲中でも用いられるようになった。

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※エレクトリック・チェロのスクロール(ヘッド)


チェロはその大きさと重さゆえにヴァイオリンやヴィオラのように顎で挟んで保持するのではなく、ボディの底に仕込んであるエンドピンを床に立てて演奏する。本体の大きさに比べると指板はヴァイオリンなどより若干細めに作られており、ヴァイオリンに比べると駒が高く丈夫に作られている。弓もヴァイオリンなどより太めだが、長さは逆に短い。

弦は金属弦が主であり、低音弦には質量を保ったまま細く仕上げるために、タングステンや銀を使用した弦が使われることがあるという。そしてヴァイオリンと同様一般的には木製のペグで弦を調弦するが張力は全体で50Kgほどになるため調弦が難しく狂いやすいらしい。

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※電子チューナーを駒に挟んで調弦中


またギター属の楽器と比べるとウァイオリン同様指板にはフレットがない。ギターは調弦さえ出来ていれば特定のフレットを押弦することで間違いの無い音程を出せるがチェロはホームポジションを覚えることから始めなければならない。
しかし個人的なことだが、私は8歳から母親の影響で三味線を習わされ、高校時代にギターに持ち替えるまで演奏していた関係上、フレットのない楽器に違和感はまったく感じない…。

なおチェロには4本の弦があり、奏者から見て左側、音が最も高い弦から第1弦、第2弦、第3弦、第4弦と番号が振られている。
調弦は、第1弦が中央ハ音のすぐ下のイ音(A3)であり、以下完全5度ごとに、ニ(D3)、ト(G2)、ハ(C2)となる。弦の呼び名を番号でなく「C線」「C弦」 (慣習的に「ツェーせん」「ツェーげん」とドイツ語読みする) などと音名で呼ぶことも多いらしい。そして第4弦のハ音は中央ハ音の2オクターブ下の音となる。
またチェロは最低音のC2から、指板を押さえる通常の方法のみによって4オクターブを越える広い音域を持つが、何と言ってもチェロの音色の特徴は温かみのある中低音でゆったりと響くその音色にある…。

■エレクトリック・チェロの特徴
 私が手にした安価なエレクトリック・チェロは正面から見る限りはいわゆる標準4/4サイズといわれるチェロと同等なサイズだし重量も木製のチェロとほぼ同じく3Kg程度だ。ただしその構造は音を響かせ増幅させないという主旨からほとんどがフレームだけの独特なデザインをしている。この点はエレクトリック・ヴァイオリンなどと同じである。
ただし糸巻きは木製で一般的なチェロと同等だし指板にはエボニー(黒檀)が使われている。
また弓は一般的なチェロ用と同じ物を使うし当然ながら奏法に違いは無い。

勿論駒の下にはピックアップが埋め込まれ、指板からエンドピンに至る背面にはスイッチのON・OFFを始めボリューム調節やヘッドフォンジャックおよびアンプとの接続ジャックが装備されている。なお乾電池で使うことが出来るのも素晴らしい。

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※エレクトリック・チェロ本体裏面に電池を入れるBOXがある


ただしサイレント…といっても電源を入れずに弾いて、まったく音がしないわけではなく相応の音は出るし、エンドピンを床に立てればその振動は意外に伝わると考えなければならず、電子チェロとはいえ夜間には遠慮しなければならないケースもあるかも知れない。
というわけで外観は木製のチェロとは全く違う印象を与えるであろうエレクトリック・チェロだが、あくまでチェロを楽しむという姿勢で取り組みたいと考えている。

このAmazonで購入したエレクトリック・チェロのメーカーは中国のYinfenteというメーカーで完成品だけでなくギターやヴァイオリンなどの組み立てキットや部品を販売している会社だ。
しかし、残念なことにとても不愉快な思いをしたのでここから購入するのはお勧めできない。ここでは詳しくは書かないが一度送られた荷物が送料が不足していたらしくメーカーに返送されたこともあって到着までに一ヶ月かかるというお騒がせな結果となった。トラブルはそれだけでなく、やっと届いた大きなダンボールを見て嫌な予感がした。
それは腰のない柔なダンボール箱だったために二箇所ほど亀裂がはいったり別途凹んだりしていた。幸い中身には支障がなかったものの、取説を始め附属品の一部が同梱されていなかった。さらにさらに…決定的な事として乾電池二本を収納する電池ボックスの片方の電極がないためそのままでは使い物にならない製品だった。

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※送られてきたこのバッチイ梱包を見て不吉な予感がした(笑)


こうした製品を平気で送るメーカーだとすれば、リピーターにはなり得ないし当然のことながらAmazonには詳細なクレームを入れた。ただし交換してもらうのは簡単だが送り返す面倒や、交換品がまたまた不良品でないという保証はない(笑)。幸いなことに電池ボックスは部品を手に入れれば修理可能なことが分かったので基本はこのまま使おうと考えた次第。

■エレクトリック・チェロを弾く
「弾く」といっても初めてのチェロだからしていきなり曲を弾けるはずもない。まずは正しく調弦することから始まり、いわゆるホームポジションおよび音階を綺麗に音出しできるよう練習しなければならない。
ともあれ形から入る私としては自分がエレクトリック・チェロとはいえチェロを抱えている姿はウキウキして仕方がない(笑)。

実際には弓の扱いや松脂の塗り方などなど初めてのことだらけだが、楽しみながらひとつひとつクリアしていけたら良いと考えている。ただし初心者が偉そうな物言いをすると笑われるかも知れないが何ごとも最初が大切だ。
ということで、私は近隣の駅ビルにある音楽教室でチェロの体験レッスンを文字通り初めて体験した。基本は独学するつもりだが最初が肝心…。初歩の初歩を間違うと後々行き詰まるかも知れないのでせめて楽器の構え方や弓の保持や動かし方の基礎をプロから教えていただくことは有益に違いない。

ということで某月某日、私は音楽教室で体験レッスンを受けてきた。レッスンは三十分という大変短い時間だったが、想像以上に得るものが大きかったと考えている。
当日の先生は女性の方でしたが、使用するチェロはその場で貸していただいた。そして楽器の保持は勿論、弓の持ち方と構え方を教えていただいたが弓の持ち方とボーイングは思っていた以上に難しかった。

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※某音楽教室の体験レッスン中の筆者


最後にこれまた偉そうな物言いになるが、私にとって音楽は聴いて楽しむだけで無くどのような楽器にせよ自分で演奏することが一番だという信念を持ってこれまで三味線、クラシックギター、フラメンコギター、ピアノ、ウクレレ、リュート、管楽器やハーモニカなどを楽しんできた。全てが満足できる領域に達することなどできようもなかったが、音楽というものが如何に素晴らしいものであるかを体験し続けてきたのは幸せだった。
というわけで、エレクトリック・チェロを始めたからには一曲ぐらい何とかしたいものだが、どうなりますやら(笑)。



新刊:小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ
新刊:私のMacとパソコン黎明期の体験史
新刊:スティーブ・ジョブズ学入門/成功の秘密
新刊:Macintosh思い出のソフトウェア図鑑
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プロフィール

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員