前回のトピックでMagic Trackpadの登場は決してマウスが終焉を迎えるのではなく逆にポインティングデバイス環境拡張になるだろうというお話をした。今回は全くの個人的な…そして独断を承知でマウスとの操作感覚の違いやMagic Trackpadそのものの使い勝手について印象をレポートしたい。

 

Magic Trackpadは縦横共に約13cmのアルミ製の四角形で、そのうち幅13cm×縦11cmほどがガラスで覆われマルチタッチのトラックバッドとして機能する。
その第一印象はある意味では大変地味な製品で当然といえば当然だが、トラックパッドとしての面には何の飾りもなければボタンもない。ただし側面から見るとそのデザインはApple Wireless Keyboardのそれと同一であることがわかる。

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※Magic TrackpadのデザインはApple Wireless Keyboardと同一である


奥側は傾斜をつけるためApple Wireless Keyboard同様筒形のデザインとなっており、左は単三乾電池の装着口、右は電源スイッチになっている。また色味は勿論そのサイズや机上に置いた高さもApple Wireless Keyboardと合わせてあるため、Apple Wireless Keyboardの左右に置くとその幅はピッタリだから、並べて利用する場合にも両手にとってシームレスに扱うことができる。

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※Magic TrackpadはApple Wireless Keyboard と並べると一番美しい


ちなみにMagic Trackpadを購入したユーザーが最初にやらなければならないことはMac OS X 10.6.4以降のOS環境をソフトウェアアップデートしMagic Trackpad Software Updateをインストールしなければならない。
そしてマシンの再起動後に「システム環境設定…」の「トラックパッド」をクリックしてすればマウスと同じようにMagic Trackpadで可能な動作の設定、すなわち軌跡の速さやダブルクリックの間隔、スクロールの速さといった調整が可能で各操作が動画で解説されているので機能の理解には大変役に立つに違いない。

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※「システム環境設定…」の「トラックパッド」で機能とオペレーションの関係や設定が可能


Magic Trackpadそのものは大変よく出来ていると思う。
ポイント、クリック、ダブルクリック、右クリック、クリックしてドラッグ、2本指でスクロール、回転、ピンチ/拡大縮小、controlキー併用の画面の拡大縮小、前ページ/次のページ、アプリケーション切り替え、Expose起動とどのジェスチャーもなめらかだ。無論それぞれのジェスチャーが有効かどうかは当該アプリケーションが対応しているかによるのは当然だが…。

Magic Trackpadの表面はガラスが貼られ、そのためか指先の滑りは抜群である。前記したどのようなジェスチャーもMacBookなどのトラックパッドより格段に大きなサイズのためか余裕を持った指使いができる。したがって使用するアプリ側の問題を別にすればMagic Trackpadで可能なことで不都合はなくあら探しは難しいかも知れない(笑)。
ただしMagic Trackpadもそのすべての能力を引き出すには相応の環境を整える必要があるのも事実である。
そのひとつがクリックである。実はMagic Trackpadには2種類のクリックの仕組みがある。
勿論そのひとつはトラックパッド内のどこでも一本指でタップすればそれがクリックとなることだ。そして2つ目はMagic Trackpadを…それも中央から下の方がやりやすいが…物理的に押すことだ。
押してみると分かるが最初のタップによるクリックとは違い実際にクリック感がある。なぜならMagic Trackpad背面手前側左右に2つの丸い滑り止めがあるが、これがスイッチになっているためだ。

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※裏面の滑り止めがクリックのスイッチになっている


したがってMagic Trackpadの裏面にあるスイッチは当然のことながら机上などにきちんと置かれていないと動作しない。
例えば手に持っての操作にはこの物理クリックは働かないので注意が必要だ。

さてマウスで出来てMagic Trackpadに出来ないことが無いとすれば「Magic Trackpadの登場はマウスの終焉」といった意見も出てくるわけだが、それについては別途「Magic Trackpadはパソコンの歴史においてひとつの回帰に過ぎない」に書いたので繰り返さないものの、そうした意見は短絡的だと思う。

ところでMagic Trackpadはいいことずくめであら探しは難しいと書いたが、実際にはいくばくかの違和感もある。
まず欠点というには心苦しいが私のようにノート派ではなくデスクトップ派のMacユーザーにとってはマルチタッチインターフェースといえども慣れも含めてまだまだ感覚的に未知の部分がある。ただし誤解の無いように申し添えるが個人的にはPowerBook 100から歴代のPowerBookを数台使ってきた1人でもあるのでトラックボール式のポインティングデバイスからトラックパッドまでを熟知しているつもりである(笑)。

ともかく同じマルチタッチインターフェースでもiPadのそれは画面に直接指で触れる分だけ直感的であり、そこにあるオブジェクトなどに指で触っている感覚なわけで違和感はない。しかしトラックパッドにしろMagic Trackpadにしろ、モニタ画面との距離感には些か相容れないものを感じる…。ただしそれはマウスだって同じだろうと言われるかも知れないが、ちょっと違う…。
もともとマウスは腕ならびに片手の代用品という意識が働いている。例えばモニタの右上にオープンしているフォントパネルを移動しようと考えたとき、私たちの行動はまず「フォントパネルを移動しよう」と意志決定した後に視線はその対象を見る。続いてどこか別の位置にあるポインタを動かしてフォントパネルのタイトルバー上に置きマウスボタンをプレスしたまま移動する…といった順序になると思う。

このフォントパネルのタイトルバーをマウスなどでハンドリングすることは我々が手で物を掴むことをシミュレートすることだと考えればマウスとMagic Trackpadの違いが分かりやすいかも知れない…。
なぜなら私にとってマウスによるオペレーションは正しくフォントパネルのタイトルバーに手をかざしてそれを掴み移動するという…それが仮想的であっても自身の意志を自然な行為として転換できているように思える。
事実マウスは普通掌で覆うように持つからして「手で掴む」という行為とあまり認識の差は生じない。しかしMagic Trackpadによるそれは狭い領域(マウスの動きと比較すれば)をこのケースでは一本指でオペレーションするわけで、敢えていうなら前記した思考と行為とが結びつきにくい感じがする。無論マルチタッチインターフェースの回転やピンチといったジェスチャはある種の代替行為と考えられるがiPadとかiPhoneのように直接対象に指を触れるならともかく、デスクトップ機のようにモニターとMagic Trackpadは通常数十センチ離れているだけでなく普通は90度前後の角度差があるわけで感覚的に多少の違和感を覚えるときがあるわけだ。
まあ、今さらデスクトップのオペレーションを机上のメタファーとして捉えるのも少々古いかも知れないが、いまだに書類のアイコンは書類らしくフォルダはまさしくフォルダのデザインをしているのだから “自身の手でそれらを操作する” という感覚は自然ではないのか…。

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※この両雄は今後どのような発展をたどるのか?


またMagic Trackpadの感度の良さが徒となるケースもある。Magic Trackpadをメインキーボードの左右に置いた場合も、そしてキーボードの手前などに置いた場合もMagic Trackpadに触れるつもりがないのに指や掌の一部が触れ、ポインタが行方不明になったり、意図しないラインにテキスト入力がされていたり、あるいはこれまた突如意図しないメニューが表れたりといったことはないだろうか…。私は結構それを経験する。このことはMagic TrackpadだけでなくMagic Mouseにも時折感じる不満なのだ。その点一昔前のマウスはトラッキングの精度は些か低くても誤動作は少なかったのでイライラ感はなかったように思うのだが…。

無論その多くは慣れかも知れない。良い悪いはともかく人は自分が慣れ親しんだ行為をよしとする生き物だからトラックパッド派の方たちは私のような感覚の真意は分からないかも知れないしMagic Trackpadが何の不自由もない最高のデバイスだと手放しで褒めるユーザーも多いだろう。
この場はそのどちらが正解か…という答えを出す場ではないしまた出せる問題でもないからひとつの経験の違いと好みの問題ということで片付けてしまうしかない。
ともあれMagic Trackpadをひとつのポインティングデバイスとして評価するなら間違いなく最高の製品のひとつに違いない。ただしそれを使うのは様々な目的と経験の違いを持つ生身の人間である。
そもそもが万人に向く製品が存在するという認識自体が危険なのかも知れないがこのMagic Trackpadは日常のオペレーション向きというより、ある種のプレゼンテーションに使う方がインパクトがあるような気もするのだがデスクトップ機向けの製品にそれを要求するのも無理な要求だ…。
というわけでMagic Trackpadという製品が今後の実務の中でどのようなポジションに落ち着くのか、私自身も興味のあるところである。