
先日女房もiPhone 4を入手できたので早速iPhone 4同士でなくてはできないビデオ通話機能 「FaceTime」を試して見た。無論この種の映像による通話はこれまでにも他社携帯で使えたわけだがiPhone 4のそれはいかにもAppleらしいスマートでシンプルなもので暖かな気持ちになってくる。
私らの歳になると人生のあるときあるときにエポックメイキングな出来事があったことを思い出す…。
自宅に初めて黒電話が鎮座したとき、白黒テレビが和室の六畳隅に置かれたとき、そしてそのテレビに色が付いたとき…そんな印象的な出来事の延長線上にFaceTimeもあるような気がする。それはiPhone 4ユーザー同士でなければ体験できないのは残念だが無論iPhone 4の目玉のひとつでもあるわけだ。
ところでこのFaceTimeのコンセプトを知るにはアップルのウェブサイトにある紹介ビデオを見るのが一番だ。すでに何回もご覧になった方も多いと思うがバックにサッチモ(Daniel Louis Armstrong)の歌声が流れる中で紹介される映像にはひとつのテーマがあることに気づかれることだろう。
それはビジネスシーンがひとつもないことだ…。
ムービーの各シーンは母と子および父親、孫とおじいちゃんとおばあちゃん、友人たち、そして若いカップルたちがFaceTimeで心を通わせるシーンが続く。しかし仕事がらみを思わせるシーンはひとつもない。実はこうした点はFaceTimeに限らずビデオ通話とかビデオチャットといったテクノロジーを活用できるかどうかのキモの部分なのである。
※アップルのサイトにあるFaceTime紹介ビデオのシーン。それらは家族や恋人たちとの心温まるビデオ通話がコンセプトになっている
かつての私の会社は東京新宿に本社があり札幌に支店を持っていた。
申し上げるまでもなくその物理的な距離は遠く、最大の問題は意思疎通のための費用がかさむことだった。行き来するのは当然のことながら飛行機を使うことになるし日帰りというわけにも行かないから宿泊代もかかる。それ以上に日々の打ち合わせのために長時間電話を使うため通信代がばかにならない額になっていた。
現在のようにSkypeといったインターネット電話も普及する前だったしビデオ通話などまだまだ大会社が大きな設備で使うテレビ会議といったイメージしかなかった時代だった。しかしインターネットが急速に普及する中でその通信費を軽減する目的のために最低の設備でビデオ通信ができないかどうかをあれこれと模索し実験していたのも事実である。
その後Mac OS Xに標準装備されたiChatが登場したとき「やっと実用的なビデオ通話が手軽に使える」と喜んだが、実は活用するには様々な問題があった。
他の方の利用状況は知らないが、私の周辺では現在もこのiChatによるビデオ通話をビジネスで十分に活用しているという話しはあまり聞かない…。その要因のひとつは通話は簡単であってもMacintoshというパソコンを使う以上、まさしく誰に対してでもというわけにもいかずその利用場面が限られること、そして何よりも利用者の多くが自身の姿を相手に見せるということに抵抗というか躊躇する傾向があるからだ(笑)。
仕事関連の打ち合わせというものは申し上げるまでもなくいつもニコニコしていれば良いというものではない。もし文字通りビデオ通話が実際に相手と対面して話し合う代理行為だとすれば面白い話しというよりクレームだったり叱咤だったりするケースもあるわけだ。そうしたシーンにおいては実際に対面しているならそれはそれはで仕方がないわけだし当人だけでなく周りの雰囲気まで体全体で感じられるものだが一対一のビデオ通話はそうはいかない。
この種のビデオ通信は人と人とが実際に対面して会話する場合の良い意味での曖昧さを許さないものがあるような気がする。誰だって注意を受けたり叱られている…あるいは不本意な仕事を受けなければならないと言った際の自身の表情を映像で送り合うということを生理的に好まないだろう。
特に相手が女性の場合、ビデオ通話の前に化粧を直したいとか、いまとても疲れた顔をしているので通話だけで打ち合わせをやりたい…といった要望から私はビデオ通話に至らなかった実例もある(笑)。そして緊急時に自宅にいるスタッフにアクセスする場合なども背景としての自宅内部、すなわちプライバシー領域が映ってしまうことに躊躇したり、「すでにパジャマに着替えてしまったので映像は止めましょう」ということもあり得るわけだ。
無論こうした否定的なことばかりではなく実際にビジネスの場でビデオ通話を活用されているケースも多々あるわけだが、AppleがFaceTimeのコマーシャル映像を作るにあたりそのコンセプトをプライベートに限ったことはその辺の機微をよく承知した上での結果だと思われる。
※愛犬の様子をFaceTimeで女房に報告(笑)
だから、本当に心を許しあえる相手と喜び輝いている表情を送り合うのがFaceTimeには似合っている。そしてFaceTimeのCMに登場する人たちの表情からは少しでも早く…ビデオの映像でなく、実際に相手と会いたいという強い願いが伝わってくるではないか。そう思わせることこそビデオ通信の役割なのかも知れないと思うほどに…。
FaceTimeは実際に使ってみるまではその良さや面白味が分かりづらいかと思うが、このFaceTimeを使いたいがために家族同士や友人同士、勿論恋人同士がiPhone 4に乗り換える魅力を持っているものといえよう(笑)。
なお画質はAppleのコマーシャルのようにいつでも最高画質というわけにはいかない…。その場所の明るさや通信スピードなどに影響されるが総じて実用レベルの映像をとても簡単に送り会えるのは事実である。
今後はこの Face Timeによる”face to face “の手軽さを生かし、商用サービスもいろいろと登場してくるであろうことも予感させるが、皆さんはすでにFace Timeを体験されただろうか…。