
先に「本はすべて電子ブックになるというのは幻想」というトピックを書いたが、書籍ではなく資料としてのカタログ類はまた別の話である。特に優れたiPadアプリ「i文庫HD」を使って電子化したものを閲覧管理するメリットは大いにあると思うのだ。それらをマックにではなくiPadに構築することはiPadをひとつの資料棚と考えると至極自然でかつ便利に使える。
私はiPhone 3GSに「i文庫」をインストールして使ってきた。そしてそのお陰かこれまで作品の存在は知っていたものの読んだことのない作品を多々読むことが出来た。
以前この「i文庫」についてもご紹介したことがあるが、デジタルブックリーダーとして必要十分な機能と能力を備えてかつシンプルな「i文庫」は無くてはならないアプリのひとつになっている。
それがiPad向けとして「i文庫HD」がリリースされたと聞いたとき、手元にiPadが届いたその日に最初に購入したのはその「i文庫HD」であった。
無論この「i文庫HD」で数々の読書もできるわけだが私の興味は自身が気に入った小説や絵本のデジタル化といったことよりこれまで資料として集めてきたAppleに関する多種多様なカタログ類の電子化ならびに管理閲覧にある。
Apple IIからLisa、あるいは黎明期のMacに至るまで当時のAppleという企業あるいはその時代を知る上でカタログとかパンフレットの類は貴重なものである。単にプロダクトのスペックを知るということだけではなくAppleがどのようなコンセプトを持ってその製品を世に問うたのかを知るにはもってこいの情報だが、これまた20年とか30年前の紙類は完全保存も面倒だしちょっと乱暴な扱いをすれば破れたり折れたりする。
それ以前に一応書棚に収めてあるはずだが、必要なときに即探し出すのに苦労していたこともあり何とかこれらを電子化して使い勝手の向上と原本保存を目指そうと考えてきた。
当然それらをスキャニングし、例えばPDFとして保存するといったことはすぐにでも可能だがそれらをメインマシンに常設させ、PDFリーダーで読むという何とも無機的というか機械的なあれこれが好きでなく躊躇ってきたのである。
それにMac OS Xはマルチタスクだからしてメインの作業をしつつ、参考資料としてそうしたPDFなどを検索・閲覧すること自体は容易だがApple 30インチ Cinema HD Displayをしても様々なドキュメントを重ねて広げると効率が下がる…。その点iPadに参考資料を構築し「i文庫HD」で即時に閲覧するとこれがなかなか具合が良いのである。
その際「i文庫HD」内の資料類はiBooksのように木製をイメージした本棚に並べられ、即座に必要な一冊を取り出して開く様はまさしく机上に一冊の資料を広げるようで違和感もない。
では「i文庫HD」で閲覧するファイルはどのように作ったらよいか…。
今回ご紹介するカタログ類の場合にはまずオリジナルの印刷物をスキャニングする必要があり、複数ページにまとめる必要性からPDF化することになる。ただしまったく個人的な好みだがAdobeのAdobe Acrobatも所有しているものの高機能ではあるが決して使いやすいとは思わないし基本的にこうした高価なアプリは必要ない。
PDFを作成するツールーもいろいろとあるようだが、ここでは「PDFpen」というアプリを使った。ちなみに「PDFpen」 のシングルユーザーライセンスは¥5,000 / US$49.95である。
「PDFpen」はPDF書類の作成はもとより、分割、結合、ページ順序の変更、テキストやイメージオーバーレイでの拡張などができる実用的でシンプルなツールである。無論書類内の既存テキストを編集可能なテキストオブジェクトで置き換えることや書類内の既存イメージの移動、サイズ変更、削除なども可能である。したがって特別高度な書類を意図しなければPDFファイル作成は「PDFpen」で十分だと考える。今回私が「PDFpen」を使ったのは後に資料目的に沿った加筆やある種の図版の追加などができるからだがPDFを作るだけならどんなアプリでもかまわない。
まずは前記したようにカタログのすべてのページをスキャニングしファイルとして保存する。ここではファイルフォーマットはJPEGでもTIFFのどちらでもよい。ただし注意することはいたずらに巨大な解像度、膨大なファイル容量のものを作らないようにしなければならない。
※キヤノンのインクジェット複合機のスキャナでカタログの全ページをスキャンして保存
この辺の加減はiPadで表示することを考えかつ自身の要求を鑑みて圧縮加減などを事前に調べておくとよい。そして例えばファイルが10個あるとすればファイル名の後にページ順に “0001”, “0002” といった番号を付けておく。
続いて「PDFpen」を起動し新規書類を開き、まずは「ページ設定…」で書類のサイズ、すなわちA4なのかB5なのかといったことを設定する。そして先に用意した画像ファイルをドラグ&ドロップすればページ順に読み込まれるはずだ。
※「PDFpen」にファイルを読み込みPDFとして保存する
ページ順に間違いがないか、どこかのページにおかしな箇所はないかといった確認後、それをPDFとして保存するだけである。保存後は念のためファイル容量を確認し万一考えていた以上の大きな容量になっていたら再度作り直せばよい。
※PDFとして保存されたファイルアイコン(拡大)
さてこのPDFを「i文庫HD」に登録する方法だが、これも何ら難しいことはない。
iPadをMacintoshにつなぎ同期を図る。そしてデバイスにあるiPadをクリックし「アプリ」のタブを指定。画面下に「アプリケーション」の欄があり「iBunkoHD」がリストアップされているはずだ。
※「i文庫HD」の書類としてPDFを追加登録
その「iBunkoHD」をクリックすると右の欄に「iBunkoHDの書類」というウィンドウが開くのでそこに先に作ったPDFファイルをドロップしてみよう。無論「追加…」ボタンをクリックしファイルダイアログからPDFを指定してもOKだ。
これでiTunes側に登録はできたので「同期」ボタンをクリックしiPad側に指定ファイルをインストールすれば基本作業は完了だ。後は「i文庫HD」の「フォルダ」から当該ファイルを指定し、例えば「本棚1」に登録すればよい。これで「本棚1」に当該PDFが登録され本棚にその書類が表示される。
※「i文庫HD」の「本棚1」にディフォルトの表紙が付いてPDFが登録される
ただしこのとき本棚にならぶ書類の表紙はディフォルトのものが使われるものの「i文庫HD」は本棚に登録した書類に別途任意の画像を使ってオリジナルな表紙を作成することもできる。したがってカタログの表紙画像を用意しiPadの「写真」に登録しておけば「i文庫HD」から指定するだけで本棚にならぶ書類にオリジナルな表紙が付く。これで本棚の雰囲気が向上するだけでなく一目で何のカタログ、書類であるかの判別もつきやすいので是非表紙は付けておくべきだろう。
※「表紙の変更」を実行(上)とフォトライブラリに登録したカタログ1ページ目のビジュアルを指定(下)
また別途必要ならディフォルトでファイル名が表題として使われるが「詳細設定」から「表題の変更」をすれば任意のテキストを付加する、あるいは付けないことも選択できる。
※「本棚1」に指定したカタログ表紙としてPDFが登録される
以上概略だが「i文庫HD」で活用するカタログ資料類(だけとは限らないが)のデジタル化および登録の方法をご紹介したが、こうして登録した資料はページめくりなども含めてリアルな使い方ができ、メインマシンの作業中に手軽に参照が可能だし頻繁に貴重なオリジナル資料を手に取る必要もなくなる。
※「i文庫HD」で登録したカタログを開く(上)。iPadを横にして見開きページとして利用した例(下)
とはいえ個人的なカタログ資料のデジタル化はiPadによる「i文庫HD」を使うことで方針を決めたばかりであり、これからかなりの量になるスキャニングを開始しなければならない。やはり重要なのは地道な作業が基本だということか(笑)。