Macintoshと比較するとLisa に関する資料は驚くほど少ない。その原因は申し上げるまでもなく短命に終わった製品寿命にあるわけだが、その数少ないドキュメント類のひとつとして1984年に出版された書籍などの入手を画策しているが、今般それらとは別の当時Appleディーラー向けに用意されたという「 Lisa 1 Set Up Manual」を手に入れることができた。

 

Lisaのオペレーションに関しては当然のことながら製品付属のマニュアル類に詳しい。まずはそうしたマニュアル類を丹念に読んでいるところだが同時により詳細なことやメンテナンスあるいはトラブルに関することとなるとマニュアルの記述は一般ユーザー向けだけに限界がある。
幸い現時点で私の手元にあるLisa 2は特に問題がなく正常動作しているが、そのハードウェア構成といった仕組みの概要でも理解しておけば万一の場合に役立つに違いないしマニュアルより奥深い知識を得られることを楽しみにこの「 Lisa 1 Set Up Manual」を手に入れた次第である。

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※1983年にAppleディラー向けに用意されたという「 Lisa 1 Set Up Manual」


無論このドキュメントはLisa 1を対象にしたものだが、そのハードウェアに関する多くの事柄はLisa 2においても参考になるし、後述するようにこのドキュメントから様々なことが推測できるので面白い…。
しかしこの黒い3穴のバインダーに収められた140ページほどのドキュメントの正式な名称は記述されていないのでわからない。ただしその目次 (Table of Contents)にはSectiion 1から6までがあり “Take-Apart”, “Set-up”, “Video Take-apart”, “Video Adjustments”, “Diagnostics”そして“Troubleshooting”の6項目のドキュメントがそれに適合した6つのインデックスに仕切られて綴られている。

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※ドキュメントは3穴のバインダーに140ページほどの資料が納まっている(上)。そしてSectiion 1から6までセクション毎のインデックスで仕切られている(下)


私が本ドキュメントをディーラー向けであろうとするのは今回の入手元自身が「古いアップルのディーラーから手に入れた」と明言していることによる。
ともかく確かなことはその内容や作りからして当該ドキュメントはユーザー向けであるとか店頭に置かれることを意図したものではないだろう…。販売側やセールス担当がLisaのセットアップからトラブルシューティングにいたるまでの概要を知るべく用意されたものであることは間違いないと考える。

各ページは一部を除きレターサイズ用紙にタイプで打たれたもののコピーで、その上部にはアップルロゴと共に“ apple computer inc.” とプリントされている。なおフッターにはページ番号と共に制作年月日が記されているが、それによれば本ドキュメントは1983年7月23日から8月23日(目次)までの間に作られたことを伺わせ、ページによって制作日付が何種かある…。
このドキュメントはアップルロゴと社名が配されているからにはAppleの正式なドキュメントに違いないだろうが、いくつかのページに掲載されている図は手書き丸出しのラフなものまであってプロフェッショナルによる図を興す時間も意図もなかったようで興味深い。

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※Lisaのハードウェア構成を説明する図だが、ちょっとラフ過ぎやしないか(笑)


Appleがどのような意図で本ドキュメントを用意したかの詳しいことは今となっては不明だが、使われている用紙やその全体的な作りから推察するとやはりLisaを販売するディーラーの担当者たちへの研修・説明のために用意されたものだという気がする。ただしバインダー表紙に貼られているアップル6色シールはAppleがこのドキュメントを供給する際に貼り付けたのかあるいは受け取ったディーラー側の使用者が個人的に貼ったのかは不明だが、その貼り方…すなわちアップルロゴの部位だけを剥離させて貼っていないこと…などを考えると前者のような気がする。

いずれにしてもその内容は精査されたものであるのだろうが、その作りはいかにも事を急いで用意したもののようで、用意周到に準備されたものとは思えない。
事実、Lisaは1983年1月19日に正式発表され、6月に出荷されたことと考え合わせるとAppleがその思わしくない売上に対処すべく急いでこうしたドキュメントを用意したと考えるのもあながち間違ってはいないように思える。そして当時の混乱と困惑がなにか手に取るように分かるような気がする…。
なにしろ前記したように各セクションに記されたドキュメントの制作日が正しいとするなら、7月23日からタイピングを始めて丸1ヶ月後の8月23日に全体の構成が見通せたのだろうか…目次をタイプしている。しかしこれを多部数コピーし、セクション別のインデックスと共にバインダーに閉じるのも制作冊数にもよるものの数日かかったに違いない。
ただしこれまた確かなこととしてその翌月…すなわち1983年9月12日にAppleはこれまでの販売戦略の過ちを認め、ソフトウェア一式をオプションにし、Lisa本体の単体を6,995ドルで販売開始しているである。

一般的に考えるならLisaの出荷が始まった6月にタイミングを合わせてこの種のドキュメントは完成されていなければ意味がない。しかし少なくとも販売が開始された翌月末近くになってからこのドキュメントを用意し始めたとするなら正常なビジネスとは思えない。
スティーブ・ジョブズが途中で開発チームリーダーから外れたにせよ、一時は「宇宙をへこまそう」とまでスタッフらを鼓舞し開発を進めた革命的なマシンの出荷時期に間に合わないドキュメントなどそもそもが変だ…。
やはりその最終的な価格決定からLisaの販売戦略そのものを大きく変えざるを得なかった混乱がここにも見て取れるようだ。