
今回縁があって手に入れたLisa 2/10は私にとって早くも今年一番のインパクトある出来事となった。Appleは今年も次々と魅力的な製品を市場に投入するだろうが、それらは予算さえ許せば入手可能だが、すでにリリースから25年以上も経過したLisa…それも完動品など欲しくてもなかなか手に入れることはできないからだ。
ご承知の方も多いと思うが、Lisa 2にはいわゆるLisa 2/5とLisa 2/10がある。Lisa 2/5はハードディスクを内蔵しないため一般的にはその頭上にProFileという5MBのハードディスクを設置するが最上位版のLisa 2/10(後にMacintosh XL)は10MBのハードディスクを内蔵している。
今般入手したLisaはCPUボードからすればLisa 2/10であり、起動システムをX/Profile化する際にはそれを本体内蔵とすることもできた。しかし使い勝手はともかく往時のスタイルを再現したいと考え、あえてProFileを使いその内部をX/ProFile化することを選択した次第である。またLisa 2/10ではマウスも一般的には安価で手に入れやすく安定しているマック用を使うようだがこれまたLisaオリジナルマウスに拘った…。

※ ProFileを頭上に乗せたLisa 2 全景
そういえばLisa 2/5とLisa 2/10はフロント側からでは区別が付かないが、背面のコネクタポートを見ると違いが分かる。Lisa 2/5は前記したようにProFileに接続するパラレルポートを持っていたがLisa 2/10では無くなり、代わりに内部スロットにパラレルボードを挿すことでProFileと接続できる。ただし私のLisaは壊れやすいProFileハードディスクでは十分な検証はできないため、ProFileの内部はコンパクトフラッシュ化したX/ProFileにしてある。

※Lisa 2/10 のリアパネル。左にはProFileとの接続のためにパラレルボードを装着している
なお、そのProFileの背面はX/ProFideへのCFカード装着や取り外しが簡便にできるように改良工夫されている。したがってCFを取り替えることでLisa Office System 3.0だけでなくLisa PascalやLisa Basicなども走らせることができる。
さて念願のLisaが手に入ったからにはそのユーザーインタフェースや仕様を検証することは勿論だが、それにはデータが豊富で馴染みのMacintoshと比較することが重要だと思っている。
今後少しずつその違いなどを確認していきたいが、まずは準備しておいたスペースにLisaをセットアップした第一印象は「デカイ…」ということだった。
いまLisa 2を眼前にするとその全体的なデザインはレトロ感にあふれているが当時の他社製パソコンは無機的な作りだったわけで、最初にLisaを見た時には本当に眩しかった記憶がある…。
そういえばサイズやデザインは違うものの、よくよく見ればLisaとMacintoshは似ていなくもない。
まずはケースが同種の樹脂製筐体であること、そしてカラーリングも同種のベージュだ。それにLisaの形状は当初から「人の顔のようだ」といわれたし後年にスティーブ・ジョブズ自身「クロマニョンルック」と呼んだという。
それは両サイドから見ると首から額の狭い顔が突き出ているような…ETのような姿に見えるからだ。

※Lisaを横から見たところ。スティーブ・ジョブズは「クロマニョンルック」と呼んだ
事実乱暴にいうなら、Lisaを縦に2分割した上で左半分のサイズと出っ張りを小さくし、フロッピードライブをモニタの下に位置させればMacintoshになるではないか…。

※おなじみの最初期型Macintoshを横面はLisaと似てなくもない…
少なくともLisaのデザインはMacintoshに大きな影響を与えたことは充分に想像できる。
当然Macintoshと違う点も多々あるが、Lisaは内部にアクセスしやすくコンポーネント化している。これはクローズなコンセプトだったMacintoshとは対照的だ。
Lisaはフロントパネルの下部を支えればすぐに取り外せるし、リアパネルも2本のネジで簡単に外せ内部にアクセスできる。まあ後付の考え方だが、Lisaのフロントパネル全面が簡単に外せるからこそ、Lisa 1からLisa 2への変更が容易だったともいえる。


※Lisa2のリアパネルならびにフロントパネルを外したところ
フロントパネルに関してはLisaのロゴを取り、アップルロゴの位置を変えてかつフロッピードライブ用のスリットを変更すればよかったのだから…。

※Lisa 2のフロントパネルの裏面。モニター位置にあるのはモニター表示を見やすくするためのグレアフィルター
アップルロゴといえば、以前「最初期一体型Macintoshのアップルロゴ考察」で述べたようにMacintoshは128Kならびに512Kまでの6色アップルロゴは角丸の矩形に型押しされ、矩形プレートごとMacintoshに貼られている。それは1986年1月にリリースされたMacintosh Plusになって初めてアップル形のみを埋め込む方法を採ったが、1984年1月24日にMacintosh 128Kと共に発表されたLisa 2は2年も早くその手法を採用していることになる。

※Lisa 2のアップルロゴ
LisaとMacintoshの印象はかなり違うがそれはサイズだけの問題ではない。キーボードやマウスのデザインも現在の視点から見ればいわゆる時代を感じさせるものだがデザイン的にも考え抜かれた事を感じる。
例えばキーボードだが、キーの仕様を見る限りLisa 2とMacintosh 128Kのそれは同じ物に見える。コマンドキーのキートップ刻印が違うくらいで位置もサイズも同じである。まさしくMacintoshのそれはテンキーがないだけだ…。

※LisaとMacintosh 128Kのキーボード比較。テンキーを別にすればキーの仕様は同じようだ
ただしキーボードケースのデザインはMacintoshのそれが上下に合わせた形で単に面取りしただけなのに対してLisaは段差を付け、手前側にはケース上下の接合部位を隠す工夫がなされ高級感を感じさせる。

※Lisaのキーボードケースはデザイン的にも手の込んだ仕様になっている
また本体への接続は形状は違うものの双方共にカールコードだが、Lisaがヘッドフォンのようなジャック型なのに対してMacintoshはご承知のようにモジュラー型を採用しより計量小型化を意識させている。

※マシン本体とキーボードを繋ぐ方式はLisaがイヤフォンのジャック型(右)になっているのに対してMacはモジュラー型(左)だ
マウスのデザインもかなり違う印象を受ける。LisaのマウスはMacのものより多少小さく傾斜を持った角形なのでワンボタンを別にすればAltoやStarなどのものに近い印象を受けるが無論中身はまったく違う。
実はLisaマウスの開発にもいろいろな経緯があった。なにしろゼロックス社のマウス価格は400ドルもするため同種の製品を使うことはできないとAppleのインダストリアルデザイン担当者等はメカニズムのコストダウンをホペイ=ケリー社に図った。その結果40ドル以下に抑えることに成功したという。
そんなことも影響しているのか、現在Lisaオリジナルマウスの具合のよいものを探すのはなかなか大変なようだ。とはいえこの頃のマウスはボール式で機構上はMacintosh 128Kのものと大差はないように思える。

※LisaオリジナルマウスとMacintosh最初期型マウスとの比較
ともあれマウスの不具合の多くは埃などをボールがマウス内部に巻き込み、それがローラーに付着し固まることによる場合が多い。事実私の手元に届いたLisaマウスもボールを外し3カ所のローラーに付着していたゴミを綺麗に取り去ると大変スムーズに動くようになった。
その際に役に立ったのはすでに十数年前に飼ったマウス内部のローラーに付着する汚れを取る製品だった。これは3種のサイズから適合するベルクロ式のボールをマウスに入れ、専用のボード上で転がすことで汚れをかき取るものだが、何でも取っておくものだ…。
本来ならハードウェア面の検証もいろいろとやってみたいが、ハードウェアに疎い私があれこれといじくり回し何かの拍子に動かなくなっては元も子もない。したがってしばらくは本命のUI 検証とMacintoshとの比較を試みたいと考えている。
【主な参考資料】
・「アップルデザイン」アクシスパブリッシング刊