いま、眼前にある液晶モニタの上にはiSightが鎮座している。もし必要ならiChat AVに備わっている「スナップショット」機能でカメラが捉えた映像を即キャプチャできるが、ここに至るまでパソコンによるビデオキャプチャには多くの投資を強いられたのである。 

■プロローグ 
私が初めてビデオデジタイザなる製品を手にしたのは1982年のことだったが、それはApple II用のDIGISECTORという製品だった。ちなみにここで取り上げるビデオデジタイザとはビデオカメラの類を用いてリアルタイムにその映像をキャブチャできるものを指す。したがって例えばその名に”デジタイザ”と名が付いていたとしてもThunderScanとか図形をトレースする類の機器は含まない。 
Digisector_1
※1983年当時の筆者使用Apple II用ビデオデジタイザシステム 

さて、あらためて私が使ってきた…そしてビデオデジタイザとしてご紹介できる類の機器を列記すると、Apple II用、Macintosh用そしてPC-9801用と大きく分けて三つのパソコンのために投資をしてきたことが分かる。 
ちなみに画像入力装置としては別途イメージスキャナといった機器があるが、それはまた別の機会に様々な歴史を紹介したいと思う。 
ビデオデジタイザなる機器がイメージスキャナと違うのは、いうまでもなくいったん印刷物や写真を経ずに「いま、そこにビデオカメラ経由で捉えた映像をそのままコンピュータにデジタル化できるもの」といった定義が可能だと思う。 
昨今は手軽にそして高画質なデジタルカメラがあるから、多くのユーザーは不便を感じないだろうが、私らがパーソナルコンピュータなるものを使ってきた1980年代などはビデオ映像どころの話でなく、まともに真円も描けないパソコンすら多かったのだ(笑)。 

前記したとおり、私が手にしたApple II、MacintoshそしてPC-9801といったパソコンは好みや向き不向きがあったとしてもそれぞれ当時の最先端製品たちであり、それに付随して登場した周辺機器たちもその瞬間・瞬間は最新のテクノロジーだった。したがって僭越ながら個人でこれだけのビデオデジタイザ機器を使ってきたことは、いま思えば素直にラッキーだったと思うし、他にはこうした馬鹿げたことに投資をする人たちはほとんどいなかったに違いない(^_^)。 
無論ビデオデジタイザなる製品も、時代的背景に大きく関わるものの需要がなかったわけではない。例えばApple II用の製品などは本来学術研究用であり、当時は植物の発芽の課程を研究するためなどに活用されていたという。しかし私は最初期からこのビデオデジタイザを画像入力装置として素直に?扱い、女優の姿などを取り込むために使った(笑)。 
ともかくそれぞれの機器たちは総じて高価であり、例えば後に具体的に紹介するAppleII用のDIGISECTORというビデオデジタイザは、1982年当時198,000円もした。またここでは煩雑になるのであえて細かくは記さないが、これらのハードウェアを目的に沿った環境として整えるには、適切なビデオカメラはもとより、別途メモリボードとかソフトウェアも必要であったことはご理解いただけるものと思う。 

■私が取り扱ったビデオデジタイザの種類一覧 
ではいきなりひとつひとつの製品を取り上げるのも分かりづらいと思うので、私が扱ったビデオデジタイザ関連器機をまずは一覧に列記してみたい。ただし性能などには大差があり、中にはオモチャ然としたものもあるし念のためウェブカメラも画像キャプチャが可能なので一覧に加えている。なお表記の年号は私が購入した年である。 

 ○Apple II用 
     ・1982年       DIGISECTOR 

 ○Macintosh用 

     ・1984年       MicronEye 
     ・1985年       MacVision 
     ・1987年       ProViz 
     ・1989年       Personal Vision 
     ・1989年       Color Freeze24 
     ・1989年       Color Space II 
     ・1991年       DigiVideo Color 
     ・1991年       MicronTV 
     ・2003年       USBカメラ〜Qcam For Notebooks Pro. 
     ・2003年       iSight 

 ○NEC PC-9801用 
     ・1985年       VD-100 
     ・1985年       眼力 
     ・1986年       Z\’sSTAFF PlusKit Level-2 
     ・1986年       EPSON GT-20 

これらの中で、カラー映像をサポートしているはMacintosh用のProViz、Personal Vision、Color Freeze24、Color Space II、DigiVideo Color、Qcam For Notebooks Pro.そして無論iSight。またPC-9801用としては3機種すべてだが、その時代や製品のスペックなどによりサポートする色数やその使い勝手は大きく違ったことはご想像いただきたい。事実iSightやQcamを別にすれば、Macintosh用でもそのほとんどは現在のようなフルカラー対応ではなく、当時のMacintosh本体が256色カラーであったことを忘れてはならない。 
それぞれの機器を手にしていく課程では、それまでにないクオリティとか可能性を感じていたわけだが、データの二次利用を考えると正直使い物になったのはMacintosh用の製品だったと言っても過言ではない。 
カラーとかモノクロといったことでなく、データをデジタル化してモニタに表示しただけでは何にもならない。それらを別のソフトウェアに渡して思うように加工・編集ができ、それを印刷したり再度映像の一環として使い回すことが具体的に可能だったのはMacintoshだけだった。短絡的にいえば、それこそが私がMacintoshを使いつづけてきた大きな理由であった。 

■個別にビデオデジタイザ製品を紹介 
では、大変駆け足になるが残っている資料らを元に、当時のビデオデジタイザ製品の概要をご紹介したい。また前記した製品一覧すべての解説ではないのでご了承いただきたい。 

 ○Apple II用 DIGISECTOR 

  1980年代後半まで、一番エキサイトして使い込んだのがこの「DIGISECTOR」だった。Apple II自体はカラーをサポートしていたものの、デジタイザ自体はモノクロ仕様であったが、他のハード・ソフトとの連携や工夫で往時としてはなかなか面白いことが多々可能だった。ビデオカメラはSANYO製を使う。 
Digisector_2
※Apple IIeとDIGISECTORによるダブルHi-Res取込例 

Digisector_3
※Apple IIとDIGISECTOR、そして別途ソフトウェアを使い、展示会向けとして制作したアニメーション 

 ○Macintosh用 MicronEye 

イメージセンサを使ったカメラ部分とソフトウェアからなる製品。勿論モノクロだが、Macintoshの9インチ画面を一度には取り込めず、上下半分づつをキャプチャしてから後で合成するという行程を必要とした。 
MicronEye
※MacintoshとMicronEyeシステム 

 ○Macintosh用 MacVision 

  Macintosh用のビデオデジタイザとしては最も普及した製品。ビデオカメラは前記Apple IIで使っていたSANYO製モノクロビデオカメラを活用。 
VMacVision
※MacintoshとMacVisionシステム 

 ○Macintosh用 ProViz 
256色から1670万色までのカラーをサポート。RGBはセパレート入力で解像度は640×480ピクセル。私はMacintosh IIとSCSI接続で使用。256色時でキャプチャ時間は約30秒程度、1670万色フルカラーだと約1分必要だった。またインプットコネクタがBNCだったこともあり、JVCの高価なRGBカメラ「TK-870U」を使っていた。 
PriViz_1
※日本に入っていなかったので個人輸入したPixelogic社のProViz。SCSIでMacintoshと接続する 

PriViz_3
※ProViz用に購入したこれまた高価なCCDビデオカメラ 

 ○Macintosh用 Personal Vision 
  私らはこの256色カラーボードを単に静止画像のキャプチャだけにとどまらず、Macintosh最初のデジタル動画をハードディスクにリアルタイム記録する、今で言うデジタルビデオ「VideoMagician II」を生み出した。ただし1990年当時、ハードおよびソフトウェアを一揃えするには約80万円前後のコストが必要だった。 
PersonalVision
※Personal Visionボード。二層になった高価なNuBusボードだった 
VideoMagician
※Personal Visionボードを使ったVideoMagician IIの映像取込画面 

 ○Macintosh用 Color Freeze24とColor Space II 
  カラーのMacintosh登場が登場した最初期の製品だが、この1,300ドル以上もするNuBusカードだけでは役に立たず、別途これまた数千ドルするビデオ入力のためのボードが必要だった。しかし現実にはOSのバージョンアップにドライバ類がついていかず、そのチープなハードウェアと相まって活用は難しかった(^_^)。 
VideoCard
※当時の高価な映像ボードたち。一番上がMassMicro Systems社の「Color Space II」、一番下が取り込んだビデオ映像をキャプチャするだけのNuBusボード「Color Freeze24」 

 ○Macintosh用 MicronTV & DigiVideo Color 
  共にAapps社のNuBusカードでテレビチューナーを内蔵した製品だが、勿論NTSCコンポジットのソースであれば入力可能。MicronTVはモノクロ仕様だがDigiVideo Colorは256色カラー仕様だった。 
Aapps
※それぞれグレイスケール、カラーと仕様は違うもののテレビチューナーが付いている 

 ○PC-9801用 Z\’sSTAFF PlusKit Level-2 
  ビデオカメラは当時登場した8mmカラービデオカメラ「FUJIX-8」を使う。仕様はRGB各6ビット、64階調で解像度は256×256ピクセル。取り込み時間は1画面1/60秒。 
ZsStaff+
※Z\’sSTAFF PlusKit Level-2システムを搭載したPC-9801 

 ○PC-9801用 EPSON GT-20 
  MOS映像素子を使ったモノクロカメラながら、専用の三色フィルターを使うことでカラー取り込みを可能にする意欲的な製品だった。しかし使い勝手は悪く、ほとんど活用した記憶無し。 
GT-20
※MOS映像素子はモノクロながら、3色カラーフィルタを使ったカラーキャプチャが可能 

■エピローグ 
ところで1990年台半ば頃になるとQuickTimeも普及し始め、静止画をキャプチャするということよりデジタルビデオの時代に入る。またデジタルカメラの台頭と平行し、「ビデオデジタイザ」といった言葉自体も表に出なくなった。 
私はワン・ボードマイコンを手にした1977年をスタートにパーソナルコンピュータといわれる最初期の製品たちを多く手にしてきたが、それらを計算機として利用する気はまったくなかった。 
きれい事に聞こえるかも知れないが、パソコン本体は無論、周辺機器やソフトウェアに膨大な投資をしてきたのも、パソコンで何とかまともな映像を扱おうとするための悪戦苦闘の結果であった。 

以上、大変大急ぎでパソコン用のビデオデジタイザ遍歴をご紹介したが、コスト・画質・使い勝手のどのアイテムをとっても、それらは現在のiSightの手軽さとは雲泥の差である。 
したがって、私がいかにiSightを評価しているかというその一端が多少でもお分かりいただければ幸いだ(笑)。また申し上げるまでもなくiSightはビデオチャット用のカメラであるが、手軽に静止画のキャプチャも可能だ。その安価で高機能な現実をあらためて見るにつけ、それらは私のビデオデジタイザ遍歴からすれば文字通り夢のような出来事なのである。