
先日、知人達との集まりのとき久しぶりにApple IIが話題になったが、そういえばApple IIの拡張スロットは8つあるが、現行のPower Mac G5のスロットが3つ程度なのは何故なのか…という話に発展した。
Apple IIという8ビットパソコンが成功した大きな理由はその拡張性にあったといわれている。私自身も8つあるスロットの多くを様々なインタフェースボードで埋めたものだ。そしてさらに最大限に活用していた時期にはこの8つのスロットでも足らず、別途サードパーティ製の外付け拡張ボックス「SWITCH-A-SLOT」という製品まで使っていた。文字通り、拡張スロットの数は「可能なことを拡張する」という現実的な利点があったのだ。

※1982年当時における筆者のApple IIの利用スロット。手前から「ライトペンシステム」「フロッピーコントローラ」「VISTAシンセサイザ」「デジセクタ(ビデオ・デジタイザ)」「Z80」「プリンタ I/F」そして「16KB RAM」の各カード

※スロットを4つ拡張できる「SWITCH-A-SLOT」という製品。米国から個人輸入したもの
しかし現行のPower Mac G5はもとより以前のPower Mac G3(Blue & White)もその拡張スロットは3つである。ちなみにこれまで最大数の拡張スロットを持ったAppleのマシンはMacintosh IIならびにIIxの6スロット(NuBus)であり、さらに後継機種のMacintosh IIfxには別途PDSスロットがひとつ追加されていた。

※NuBusスロットを6個(中央)と030 PDSスロット(手前右)を1つ装備していたMacintosh II fx
こうしてあらためてこのスロットの数を考えると、スティーブ・ジョブズの「simple is best」という考え方が如実に製品に繁栄されていることがわかる。
よく知られていることだが1984年に登場した最初のMacintosh 128Kはスティーブ・ジョブズの意図でユーザーが内部を開けて拡張することを初めから考えてはいなかった。拡張性といえば本体背面に用意されたプリンタポートとモデムポートくらいだったわけだ。
ジョブズのコンセプトは良く言えば常に “シンプル” がベストであり、極力余計なものは付けないという考えに貫かれている。事実Appleの共同設立者であるスティーブ・ウォズニアクの作ったApple IIも製品化に際して、ジョブズはその拡張スロットは二つもあれば十分だと主張したという。
幸い…というか、これだけはウォズニアクが譲らなかったためにApple IIは前記したように8つのスロットを持った大変拡張性の高いマシンとして製品化された。そして多くのサードパーティ各社から様々な魅力的な周辺機器が登場し、それがApple IIの売り上げにも大きく寄与したわけだ。
こうしたジョブズの閉鎖的にも思える考え方は、「ユーザーはせいぜいプリンタとモデム程度しか使わない」いう考え方からきているものだと言われるが、まさしくジョブズの執着から生まれたMacintosh 128Kはそのような意図から製品作りがなされていた。
無論、拡張性ならびにスロットの数を増やすということはマシンのデザインや仕様に密接にかかわってくることだから、単に “多ければ良い” というものではないことは確かなのだが…。
ちなみにジョブズがApple社を退社したのが1985年であり、まだ記憶も新しいがiCEOとして復活した彼が最初に投入した機種が1998年のあのiMacだった。
こうした時系列にジョブズが手がけたマシンをあらためて確認すると、その拡張性が極力制限されているマシンばかりのような感じがする。繰り返すが最初のMacintoshもそうだし、iMacシリーズもユーザーが筐体を開けて拡張を施すことは許していない。
その反対に彼がAppleにいなかった…関わらなかったマシンはMacintosh IIが代表するように拡張スロットが多いだけでなく、ユーザーが筐体のカバーを開けて簡単に内部へアクセスできるようになっている。
さて、では拡張性を廃したともとれるジョブズの意図は間違っていたのだろうか。歴史を後戻りさせて比較検討ができない限りその是非の判断はとても難しいものの、テクノロジーの進歩と時代の推移は結局ジョブズに味方したと考えられるのではないだろうか。
Apple IIの時代に、もし閉鎖的なマシンを作ったとしたら、それは確実にセールスにダメージを与えていたかも知れない。しかしiMacのこの方、USBやFireWireの採用は「拡張性は単にスロットの有無にあらず」といった時代を創りあげたのである。そしてその事は利用目的にもよるものの、ほとんどの “拡張性” はこのUSBかFireWireの接続で済むことになり、本体を開けて云々する必要性は一般的にあまり重要ではなくなったといえる。
このことはフラットパネルのiMacやeMacが支持されてきたことである程度証明できるのではないだろうか。そしてまた実際にPCIスロットも3つもあればほとんど問題はない(笑)。言ってみれば、我々ユーザー側のパーソナルコンピュータに対する意識や期待も当然のことながらApple II当時とは大きく変化していることを見落としてはいけないと思う。
我々はフロッピーディスクを廃したことをはじめ、スティーブ・ジョブズでしかできない思い切った “革命” を多く目のあたりにしてきたが、幸い現在の所「時流の波は彼に味方している」と思う。しかしその本当の意味での評価は変化の激しいこの世界にあっても、例えば10年といった後にならないと分からないことなのかも知れない。