
あの「1984」以来、Appleは数々の印象的で心に残るコマーシャルを発表してきたが、いまだに機会あるごとに思い出すのは一連の「Think different」コマーシャルだ。マニフェスト「クレージーな人たちへ」には単なる広告の枠を超えた強い印象を受けたものだ…。
ちょっと分けがあって古い写真を探していたところ、かつてサンフランシスコで開催されたMacWorld Expo会場内を自身で撮影したものが大量に出てきた。それぞれ色々と思い出のある一枚一枚だが、特に写真としてインパクトを感じる数枚…それがThink differentの象徴であるあの著名人達の姿を大きなスクリーンにして飾り立てたシーンを撮影したものだった。
確か当時は会場内にあったすべてのクレイジーたち(笑)…念のために羅列するならトーマス・エジソン、アルバート・アインシュタイン、ボブ・ディラン、マリア・カラスなどなども撮ったはずだ。しかし残念ながら今回見つかったのはパブロ・ピカソ、ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、チャールズ・チャップリンそしてボブ・ディランなど数枚であり全部が揃わない…。
個人的にサンフランシスコのExpo会場内で印象的だったのはジョン・レノンとオノ・ヨーコとチャールズ・チャップリンだったと記憶している。特にチャールズ・チャップリンのひとつは大変巨大なスクリーンで、Apple Computer社の展示スペース背景に見事に収まっていた。それは異様であり素敵であり忘れられないシーンであった。

※MacWorld Expo San Francisco会場内のApple Computer社ブースで筆者が撮影したThink different.のスクリーン。上はジョン・レノンとオノ・ヨーコ、下がチャールズ・チャップリン
この”Here’s to the crazy ones.” で始まる「Think different」広告は1997年、スティーブ・ジョブズ氏がAppleの暫定CEOに就任直後にスタートしたが最初はソフトすぎる広告だと批評家たちから批判を受けた。その批判に併合するように早速Appleはカタツムリの上にペンティアムIIを乗せ「遅い」ことをアピールしたり、バニースーツを焼くといったストレートなコマーシャルも作ったが、いま我々の心に強く残っているのは「Think different」の方に違いない。
第一…Appleはいま、かつてカタツムリの上に乗せて遅いことを強調したはずのペンティアムCPUを採用しているのだから歴史は皮肉で面白い(笑)。
※同じく筆者が撮影したThink different.のスクリーンで上はご存じボブ・ディランと下がアルバート・アインシュタイン
「Think different」とは文法的には正しくない記述のようだが、そもそもこのコマーシャルでAppleが言いたかったことは「既成概念にとらわれず、これまでと違うように考えよう」ということなのだから、厳密な文法などにもとらわれないというメッセージも含んでいるのかも知れない。そしてこの「Think different」を通して「パーソナルコンピュータとは何か?」をあらためて問いただしたコマーシャルはこれからも我々の記憶に残っていくことだろう。
ちなみにこの「Think different」は早くも翌年1998年3月14日、「クレイジーな人たちへ アップル宣言」と題する小さな書籍として国内で販売された。その帯にあるように一本のコマーシャルが一冊の本になることは珍しいことだという…。
※「クレイジーな人たちへ アップル宣言」表紙。1998年3月14日初版発行/(株)三五館
当時、これらの魅力的な人物達はポスターにもなっていたが大判であることやごく少数しか配られなかったこともあり私は残念ながら一枚も所持していない…はずだ。しかし一部ではすでにプレミアムのアップルグッズとして高い値が付いて販売されているらしい…。
個人的には資料としても面白いと思うのでこれらの会場写真をさらに探し出してきちんと整理保存しておこうと思っている。