
ExciteではAppleの博物館を意図した「Appleウィキ」を公開している。私も公式ライターとして参加しているが古い機種やOSなどにも注目が集まり、おかげさまで好評のようだ。ところでMacに関して過去の市場動向を把握する最適な資料のひとつがMacworldEXPOで配布されてきた「PROGRAM & BUYER’S GIDE」である。
当初は収集を意図したわけではなかったが、Appleのユーザーを足かけ25年、Macintoshユーザーを22年、そしてその間デベロッパーとして14年もこの世界にたずさわってきたため、少なくない資料が蓄積され、現在ではそれらが飯の種になっている(笑)。
実際に過去の状況に関わることを調べようとなると、Apple純正品ならまだしもだが、インターネットを探しても1990年前後あたりのあれこれはなかなかヒットするものは少ない。ましてや1990年代初頭において、Macintoshの市場がどのようなものであったかといったことを俯瞰的に調べることはすでに難しい時代になってきた…。
先日依頼されたこともあってそうした時代と市場の動向の一端を調査するはめになったが、一番の良い資料はサンフランシスコとボストン/ニューヨークで開催されてきた際に持ち帰ったMacworldEXPOの「PROGRAM & BUYER’S GIDE」であった。
手持ちの古い資料は未整理なものも多く、必要なものが即手元に引っ張り出せないことや、そもそも有るのか無いのかも不明なものもあり、毎々原資料を探すのに時間がかかるので厄介だ(笑)。しかし、たまたまこの「PROGRAM & BUYER’S GIDE」は1992年から1998年までと2002年および2003年のものがあったので大変役に立った。
※MacworldEXPO会場で毎回配布される「PROGRAM & BUYER’S GIDE」
ご承知のようにIDG社が主催のMacworldEXPO自体にも紆余曲折があり、その規模の大小は勿論、存続の危機までいろいろとあったが、現在は毎年1月のサンフランシスコ開催だけは続いている。そしてこの「PROGRAM & BUYER’S GIDE」が良い資料となるのはまず本場米国の景気やApple Computer社自体の動向に多くの出展企業らも影響を受け、良くも悪くもそれらがこの大きなイベントのあれこれを左右し、イベントのガイドブックである「PROGRAM & BUYER’S GIDE」に見て取れるからだ。
この10年間ほどの「PROGRAM & BUYER’S GIDE」を手にして第一に感じることは、そのガイドブックの厚さからくる印象である。
例えば2002年のガイドブックは最盛期のものと比較するとそのページ数は半分ほどになってしまった。この違いは当然のことながら出展する企業の数にも関係するし、展示されるプロダクト数にも関わってくる。
2つ目は、年代別に比較する価値のあるデータとして、展示会場の図面ならびにその内容がある。ご承知のように、サンフランシスコで開催するMacworldEXPOはモスコーニセンターで行われ、近年はメインの南館とサブとしての北館の2つが使用されるが、ガイドブックの配置図を見るまでもなく、現地で即感じることとして年々展示スペースが小さくなり、通路が広くなっていることだ(笑)。
※縮尺は少し違うがMacworldEXPO会場のひとつとして使われるモスコーニセンターの北館展示ブースガイド図。上が1993年度で下が2003年度。2003年度は全スペースの半分ほどしか使われていないばかりか出展数も激減し、ブース配置の左右に空きも目立つ
3つ目は、その展示図面と共に出展企業のリストやメインプロダクトが一望できるのもこの「PROGRAM & BUYER’S GIDE」ならではだ。ブースの大きさやどのような製品をメインに出展していたのかがよく分かる。そしてアルファベット順の出展社リストとプロダクトリストは往時の市場を確認する上で最上級の資料となる。
4つ目は、この「PROGRAM & BUYER’S GIDE」は企業広告ページも多い。したがってその年々にどのような新製品が登場し、その価格がいくらだったのかといった具体的なデータを集めやすい。勿論広告の大きさなども当該企業の勢いを示すひとつの傾向ととって問題はないだろう。
5つ目は、「PROGRAM & BUYER’S GIDE」にある著名人たちを含む多くのスピーカーによるセッションリストだ。これらの内容の多くから、その年はどのような製品、どのようなテクノロジーが注目されていたのかという傾向を把握することができる。
以上少々大げさになるが、この5点から抽出したデータを比較分析することでマーケットとしての全体像をまずまず把握できると考えている。また確かに近年はMacintoshのマーケットの全てがこのMacworldEXPOに反映されるというより、Appleとデベロッパーの対峙から出展を見合わせる企業もあり、単純に景気不景気が展示スペースのありかたに反映されているとは限らなくなってきた。すでにこうした大型イベントはビジネス戦略のありかたとしてはストレートに効果が期待できない時代になったことも感じる。
※MacworldEXPO会場の北館風景
いずれにしても、この栄枯盛衰の歴史は過ぎ去ったものとして忘れるのは容易いが、未来を確かなものにするために激動の10年間から学ぶべきことは多いはずだと思うがいかがだろうか…。