
Apple最初のデジタルカメラQuickTake 100が1994年2月に発売されてからちょうど3年後にQuickTake 200がリリースされた。それはAppleブランドではあったが、富士フイルムのDS-8ベースのOEM製品だった。今回はしばらくぶりに手にしたQuickTake 200をご紹介しよう。
デジタルカメラの進化は相変わらず凄い。解像度が増すだけでなく、手ぶれ補正機能や、人の顔を感知して自動的にピントを合わせる機能などなど、常に最良の写真を間違いなく撮れるよう、日々進化し続けている。
したがって10年前に登場したデジカメ、それもたった35万画素のCCD(原色系)で最大640×480ピクセルの解像度しかない製品など、今や誰も見向きもしない。しかし、それがAppleブランドのデジタルカメラというなら、話は少々違ってくる(笑)。
勿論よく知られているように、Appleブランド最初のデジタルカメラは1994年に登場したQuickTake 100である。その大きめの双眼鏡的デザインは多くの注目を浴びたが、ビジネス的には成功したとはいえない。その後、QuickTake 150といったいわゆるアップデート製品がリリースされたものの、AppleブランドのデジタルカメラとしてはこのQuickTake 200が最終型となり、その後同種の製品は発表されていない。
そう…QuickTake 200は1997年2月にPowerBook 3400シリーズの発表と同時だった。
※「QuickTake 200」のパッケージ(上)と本体正面ならびに背面(中・下)
さて、QuickTake 100もその製造はコダック社でありOEMには違いない。しかしあくまでデザイン回りなどは “Venus” というコードネームでAppleが企画した製品だった。対してQuickTake 200は6色のアップルロゴは付いているものの、製品は富士フイルムの”クリップ・イットDS-8″(1996年10月発表)ベースのOEM製品だった。したがって残念ながらAppleのオリジナリティはほとんど発揮されていない。ただし下記のようにいくつかの点において、Macintosh用にカスタマイズされていたことも忘れてはならない。
DS-8との相違点をあげると、以下の通りである。
※富士フイルム「クリップ・イットDS-8」
●記録フォーマットはExif-JPEGの他、JPEG、PICT、TIFFといったファイル形式をサポート
●モード切替ダイヤルの絵文字が、消去モードはごみ箱になっているなど、Macintoshユーザー向けに変更
●Macintoshと接続するためのシリアルケーブルおよごビデオケーブル同梱
●AV入力を備えたMacintoshに接続すれば、写している画像をそのまま一連のムービーとして転送および録画することができ、ビデオクリップ録画カメラとしても利用可能
●QuickTakeソフトウェア付属。QuickTackカメラ・アクセスソフトウェアを始め「Adobe PhotoDeluxe 1.0」「Adobe PageMill 2.0」「PictureWorks NetCard 1.0」「シール倶楽部 for Macintosh」が付属
●電池は単3リチウム乾電池4本が付属(DS-8では充電式単三形ニカド電池4本および充電器、単三アルカリ乾電池4本が付属)
●筐体のカラーリングがQuickTake 100や当時のPowerBookと同様なグレーになっている
現在は勿論だが、この時代あたりからデジタルカメラの開発・製造は日本が抜きん出ていることが知られ始めたことでもあり、ビジネスのあれこれを考慮するとAppleも自社開発よりOEMを選ばざるを得なかったものと思われる。
しかし、現在からこのQuickTake 200を見ると、すでにコンパクト・デジタルカメラとしての最終形デザインを示唆していることは興味深い。
もともとカメラであるからには奇想天外なデザインは使いにくい。これまで幾多のデジタルカメラ、あるいはスチルカメラを見てきたが、最初からの持論は「デジカメもカメラらしいデザインに落ち着くだろう」という事だった。
いわゆる銀塩カメラの歴史と進化はまさしく長い間の試行錯誤の結果だったといえる。したがってカメラらしいそのデザインは伊達ではないのだ。だから、QuickTake 100を最初に見せられたとき、正直あまり気乗りはしなかった(笑)。
QuickTake 200はさすがは富士フイルムというカメラメーカーの製品だけあって前記したとおり、解像度やレンズ回りは最近の製品には遠く及ばないものの、基本仕様はよくできている。無論、シャッターが軽すぎるとか、液晶表示が大変遅いなどといった問題はあるが、10年前にはこれが最新型だったわけだ(笑)。
※同梱の光学式クリップファインダを付けたQuickTake 200
しかし反対に、昨今のコンパクトカメラよりは大きめで、グリップもしっかり装備されているから大変ホールドが安定して持ちやすい。また、例えばQuickTake 200の「撮影した映像をビデオ出力し、テレビで見る…」と言った機能も、そのテレビがハイビジョンになっただけで、最新コンパクト・デジタルカメラの機種でも「フルハイビジョンで写真を楽しむ」ことを売りにしている製品があるほど、そのコンセプトとして現在に通じるものをすでに持っていたといえる。というより、最近のデジカメがスペックとしては進化しているものの、メーカーが考える機能面は昔からあまり変わりがないのだ。だから、デジカメに限らないが、ときに一時代前の製品をじっくりと手にするといろいろと面白いことを発見する
。
QuickTake 200の特徴を簡単に記すなら、最高640×480ピクセルの解像度で鮮明な24ビット(1,670万色)VGA画像、ColorSyncカラーマッチングのサポート、1.8インチ液晶ディスプレイの採用、記録メディアとしてスマートメディアの採用、1/4秒から1/5000秒までコンピュータ制御のシャッタースピードにより自動露出が可能、F2.2またはF8.0の絞り調整、接写、人物、風景の3種類のフォーカス範囲から選択するモードダイアルの採用、AV機能を持つマックあるいは一般のテレビ(NTSC方式)にデジタル画像を表示可能、光学式クリップファインダ、そして単3リチウム電池(4本)の採用などがあげられる。
ちなみにサイズは高さ7.7cm×幅12.9cm×奥行き4.7cmで、重量は240g、単3リチウム電池4本で連続約2.5時間使用できた。
価格はスマートメディア(2MB)などの付属品を同梱して79,800円だった。
登場してから10年を経過した今、QuickTake 200を手にすると、デジタルカメラとは何なのかをあらためて考えさせられる…。
QuickTake 200が登場した1997年あたりはやっとデジカメという代物が一般に認知されはじめた時期だった。ただしこれほど急速にそれまでの銀塩カメラを凌駕すると考えていた人は少なかったのではないか。それだけこの10年間の技術の進歩が凄まじいものであったことを強烈に思い知る。
Appleはその後、デジタルカメラをリリースしてはいないものの、iSightというWebカメラ製品が存在するのはご承知のとおりだ。また米国では6月にリリースされるというあのiPhoneにも200万画素解像度のカメラ機能が付く。そのスペックの詳細はまだ明らかにされていないがこれまた楽しみである。
個人的な希望としては、いまのAppleが作るデジタルカメラを見てみたい気もするが、すでにデジタルカメラの市場争奪戦はAppleとしても魅力のあるものではないはずだ。しかし皮肉な物言いになるが、他社のOEMであるAppleブランド製品は長いAppleの歴史の中でそうそう多くはない。そうした意味においてもこのQuickTake 200の存在はもっと記憶されるべきなのではないだろうか。