手元に22年も前のVHSビデオテープが届いた。タイトルは「In Business with Macintosh」という当時の米国Apple Computer社が制作したプロモーションビデオである。米国の販売市場に向けてMacの優位性をアピールした映像だが、当時はまだまだAppleとMacはマイナーな存在であった…。                                                                                                                                  

この1990年という年は個人的にも忘れ得ぬ時代である。なぜならその前年にMacintosh専門のソフトウェアを開発するという目的で起業した私の会社が本格的な始動をはじめた年だったからだ。
なにしろ「マック」といえば一般的にマグドナルドしか思い浮かばない時代だったし「ソフトハウスを始めた」といえばマジで「ソフトクリーム屋ですか?」といわれたほどだ(笑)。そしてMacintosh用のソフト開発専門の会社をやると宣言はしたが、女房以外は友人知人たちからすべて「そんなんで飯が食えるのか」と反対された…そんな時代だった。

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※1990年Apple制作のプロモーションビデオテープ「In Business with Macintosh」


前年度に会社を興したのは我々にとって1年以上有に喰っていけるだけの大仕事を受注したからでその合間にいくつかのパッケージソフト開発を進めていた。またメインの仕事が終わり他に仕事がなければまたまたサラリーマンに戻れば良い…程度に考えていたもののありがたいことに海の物とも山の物とも分からない我々超マイクロ企業に大会社からの開発依頼が続々と舞い込み、大変忙しい思いをすることになった…。

そのうち機を見てその頃の実録物語でもご紹介してみたいと考えているが、実にエキサイティングな時代だった。
Macintoshにカラー機種は登場していたが今から振り返ってもCPU能力はもとより、ハードディスクの容量やスピードあるいはメモリの少なさなどが目立ち非力であった。さらに日本語環境も標準装備されてはいたものの、それ以前の悪いイメージを引きずっており、いまだにMacintoshは日本語環境が貧弱だと言われ続けていた時代だった。

そうした現実が変わったのはひとつにポストスクリプト言語を搭載したレーザープリンタ「LaserWriter」(1985年)の登場とAldus社のページレイアウトソフト「PageMaker」(1986年)の存在だった。
Macintoshはもとよりだがその「LaserWriter」そして「PageMaker」によりDTPの概念が広く行き渡ることになる…。
当時のApple最新プロダクトとしてはビデオの中にも登場するが、主なハードウェアとしては前年度に発表したMacintosh Portableをはじめ、Macintosh SE/30、Macintosh cx、Macintosh ciなどだった。
今回「In Business with Macintosh」というプロモーションビデオを手に入れたのもそんな1990年前後の状況を再度掘り起こすひとつの材料になると考えたからだ…。

さて「In Business with Macintosh」の内容…コンテンツはイントロダクションおよびサクセスストーリー概要の後に具体的な内容が紹介される。それらは「Getting Started」「Business Development」「Accounting」「Business Management」そして「Marketing Materials」に分かれ具体的な企業の業務でMacintoshがどのように生かされ、ビジネスに貢献しているかを紹介しているわけだ。しかしビデオの主旨から考えれば当然とは言え良い面だけを強調するだけで当時の問題点などは一切出てこない(笑)。

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※「In Business with Macintosh」の主なコンテンツリスト


MS-DOSファイルとの互換を可能とする「Apple File Exchanger」はともかくとして当時Macintoshがビジネスの現場で役に立っているのはやはりスプレッドシートのExcelやデータベースのFileMaker Pro、ワードプロセッサのWordやMacWrite IIそしてDTPのPageMakerといったいまだに記憶に新しいお馴染みのアプリケーションだったことを考えると些か感慨深いものがあるがAppleのプロモーションビデオだとしても内容は決して面白くない(笑)。

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※ビデオシーンの一部はこんな感じだ


ちなみにビデオ内で紹介されているソフトウェアのリストを以下に掲載してみるが、私も知らない製品が含まれてもいるものの前記したExcel、FileMaker Pro、MacWrite II そしてPageMakerに尽きるような気がするし事実当時これらのアプリケーションは私自身も使っていた。

[ビデオに登場するアプリケーション]

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この頃AppleのCEOはジョン・スカリーだったがAppleは精細を欠きはじめており、リリースする多くのプロダクトも一部製品を除いては目新しさが失われていた。
しかしApoleはDTPとデザインという分野において一日の長があり、良好な景気に後押しされた形で生き残ったもののその3年後の1993年にスカリーはスティーブ・ジョブズと同様 経営不振の責任を取らされCEOの座を追われてAppleを辞めることになった。

なお念のため1990年前後のApple事情の主なアーティクルを以下いくつかご紹介するが、後から考えれば1990年代の中盤からAppleは薄氷を踏むような時代に突入する。ただしまだ1990年あたりはApple自身の努力も足りず混迷していたものの未来は必ず明るいと信じがむしゃらに前に進んでいた時代だったともいえよう。

【1990年前後のアップル日本市場の一端を知るアーティクル例】
1990年ラフォーレミュージアム飯倉でのJDC

「Multimedia Tools」に見る1990年前後のマルチメディア

今だから話そう…MacWorld Expo/Tokyo物語

全国Mac行脚の旅…私のエバンジェリスト物語

・【おまけ】MACWORLD EXPO SF 1990 基調講演