今更だがコンピュータの世界は日進月歩。日々新しいテクノロジーが紹介され、魅力的な新製品たちがニュース欄を賑わせる。そして古い物よりは新しい物の方が間違いなく良い物であるという確信から、古い物は即うち捨てられ、忘れられていく…。

 

当サイト…特に「オールドMac」にまとめているトピックをご覧になったある方から「このサイトは…というか主宰者である松田さんはまるでMac考古学をやってるみたいですね」といわれた。
考古学とは広辞苑によれば「遺跡や遺物によって人類史を研究する学問」とあるが、パーソナルコンピュータの歴史はまだまだ浅く本来は考古学の入り込む隙もない新しいものだ。しかし反面このパーソナルコンピュータという代物は人類の歴史上希有な進化・進歩が著しく激しい製品に違いなく、大量消費時代とマッチングして毎年…いや、春モデルとか秋モデルといったリリースがあるように新製品の登場が著しい状況が続いてきた。

人の歴史の中で多くの道具が発明されたがパーソナルコンピュータは高価な割には最も消耗度の高い製品だったといえる。
そもそも本来道具は使うほどに手に馴染み、使い勝手が良くなり愛着も増す…といった物言いができるアイテムが多かった。
例えば万年筆一本にしても我々は大切に大切に使ってきた。使えば使うほどに書き良くなるわけでだからこそ「愛用」という言葉が賛美としてついて回ったものだが、パーソナルコンピュータはそもそも5年とか10年の長きにわたり使い込むという心づもりがはじめから無い製品ではあるまいか…。

そんなパーソナルコンピュータが私たちの眼前に登場してからまだ40年に至ってないからそもそも考古学という範疇には入らないだろう。しかしこれほど私たちの生活やビジネスを大きく変えてきた製品もない。
繰り返すがある意味で…いや間違いなくパーソナルコンピュータは人類の歴史上希有な製品であり、私たちの進化にとって火、車輪、火薬、紙、文字、印刷、電気などなどといった発見や発明の中でも特別なポジションを占めるものだという気がする。そして半年後や1年後に登場した新製品の前には旧製品はすべて文字通り古く、スピードや性能も含めて劣るからして役に立たないものとしてうち捨てられてきたのが現実なのだ。

そんな時代に27年ほども前に登場したLIsaの情報を追いかけて何の役にたつのか…。これまで私はそんな類のことを多々言われ続けてきたたが、ひとつ言えることはパーソナルコンピュータという製品は未だ未完の製品だと私は考えている。
例えば自動車という道具も人々が快適で効率の良い生活を目指すには不可欠なものだが、何のために存在するのか…という意味も含めて完成の域に達した製品のように思える。
乗り心地や安全性あるいは燃料や燃費といったものの工夫・向上はこれからも追求が続くだろうが人や物を運搬するための基本的構造は見通されている。
しかしパーソナルコンピュータはまだまだ「これが完成形」と言われるものはないし例えあのダイナブックが出来たところで我々のライフスタイルに合わせてユーザーインターフェースひとつをとってもまだまだ思いもかけない進化を遂げる可能性を秘めている。
その究極のパーソナルコンピュータ(この言葉は無くなるかも知れないが)を思うとき、また決して処理スピードの速さだけを追うのではなく我々の可能性をより向上させる様々なアイデアを追いかければ追いかけるほど、これまでの進化・進展の過程を振り返るのは大変大切なことだと考える。そして時が過ぎたからこそ分かることもあるのだ…。

古い資料ほど入手することは難しいが、物的証拠は少なくても幾多のあれこれを組み合わせ、並べ、考察することで状況証拠的なものが浮かび上がってくるものだ。
問題はそうまでして昔のことを知る必要があるのか…という声もあろう。私の探求は単にAppleという希有な時代の寵児の歴史を追ってみたいということだけでなくそれまで世の中に無かったもの、世界を変え歴史に痕跡を残したプロダクト開発の背景を様々な視点から俯瞰することは懐古趣味とは無縁の…私たちの明日を知るリアルで重要なことだと確信しているからである。

相変わらず前置きが長くて恐縮だが(笑)、今回手に入れた Brochure…すなわちカタログ/パンフレットは個人的にそうした意図の一環として収集しているものなのだ。

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※Apple 1983年1月印刷のLisaカタログ表紙および裏表紙


無論、この16ページのカタログから何をくみ取るかは人それぞれで自由だが、Lisaがどのような製品であったかは勿論、関連資料などと付き合わせることでその開発過程や当時のAppleが何を考え、何を成そうとしていたのかを知ることができると思っている。さらにそれらの表裏に見え隠れする多くの人間たちの生き様や喜び悲しみまでをも俯瞰できるかも知れない…。

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※本文1ページと2ページ


さて今回入手したLisa 1のパンフレットは3部手に入れることができたが1983年1月に米国で印刷されたもので無論Lisa 単独のパンフレット類としては最初期のものである。
私は別途同じくレターサイズで今回と同じ「Lisa, It works the way you do.」と題された見開き4ページのパンフレットも所持しているが、それは1983年9月に印刷されたものと思われる。
無論パンフレットもAppleほどの企業になれば、同一製品のものでもそれを配布する目的により複数種用意するのは当然だが、今回入手したものは折り込みページを含んで16ページあり、用紙も前記のものとは違い大変しっかりしたものが使われている。さらに前記したカタログの裏表紙には「ⓒApple Computer, Inc.」とあるだけだが、今回入手したものには6色アップルロゴと当時使われていたロゴタイプが配置されている。
無論こうした配慮の違いはその配布目的に沿ったデザインなどにも影響されているに違いないが、前者に使われている写真や図版は今般手に入れたものの一部が使われていることから前者は以下「This is LIsa.」部位を主にアピールするための簡易版であったと思われる。

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※本文11ページと15ページ


本題の内容だが「This is LIsa.」「This is LIsa at work.」「Lisa follows the way you work.」「Measured by the standards of technology and…..」「Lisa’s business applications are prodigious office tools that…..」「What a single Lisa system does is impressive,…..」そして「Support and service for Lisa are…..」といった書き出しで始まる各章が示すようにLisa の全体像を紹介しようとする意気込みが感じられる内容だ。
それから後のLisaカタログと違う点は表紙をはじめとしてご覧のようなデザインが使われていることだろう。後のカタログ表紙にはダイレクトにLisaを知ってもらおうと考えたのか写真が使われているがこの最初期のカタログは全体的にも余裕が感じられる(笑)。というか、Lisaの存在意義…象徴すべきイメージがこうした抽象的なデザインで示すしかできなかったというのがAppleの本音なのかも知れない。
別の見方をするなら、簡易カタログの方はLisaの販売に関して旗色が悪いことを意識せざるを得ない1983年9月の制作だからして、その「Specification」すなわち仕様の項にはアプリケーションについてやBASIC, Pascal, COBOLなどなどといった言語ならびに開発環境などについても付言しているのも興味深い。

なお本カタログ全ページのイメージは「Apple 資料室」の方に載せておくのでご参考までに。