過日数人のMacユーザーと話をする機会があった。その席で何がきっかけだったか…私が「Toy Shop」といったアナログチックなアプリケーションの名を出したが1人も知っている方がいなかった。最近はよい意味でデジタルで完結するアプリケーションがほとんどだが黎明期にはいまでは考えられないユニークな製品が多々登場したのである。

 

本サイトの「黎明期の逸品ソフトウェアたち」にはMacintoshが登場した1984年から1990年代前後あたりまでのいわゆる黎明期に登場し、ある意味で一世を風靡した製品達をご紹介している。しかし当然のことながらそこに登場する製品達は存在したすべてであるはずもなく、まだまだ未整理のままご紹介できていないものも多いのである。
そしてパーソナルコンピュータのソフトウェアはその性格上、例えばプリントアウトは可能だとしてもモニター上で絵を描くとかそれがアニメーションとして動くといったデジタルで完結する用途のものがほとんどといってよい。

そんなMacintoshに関するアプリケーションの歴史において最終的にアナログというか、手にとって遊べるアイテムを作るために登場したソフトウェアがいくつか存在する。その代表格で忘れられない製品のひとつが「Toy Shop」なのである。

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※Macintosh 128K用の製品として1986年リリースの「Toy Shop」パッケージ


無論例えばワードプロセッサもプリンタで印刷して仕事が完結するわけだから、ある意味ではタイプライターを模したアナログチックなソフトウェアだと捉えることもできるかも知れないが、Macintoshの最初期は現在よりプリンタという機器が物作りに活躍したともいえようか…。何しろMacintoshはある種の文房具だといってもよいシーンも多々存在したのである。

さて「Toy Shop」は良質のソフトウェアを提供するパブリッシャーとして知られているBroderbund Software社から1986年にリリースされたMacintosh 128K用の製品であった。
私自身はこの製品をどこで手に入れたかについてすでに記憶がないものの、日本に入ってきた最初のロットだったと聞かされたことは覚えている。ただし「Macの達人」には1986年12月に「Toy Shop」の名が登場するので入手はその前後だったのかも知れない。

それはともかく、この頃のソフトウェアパッケージは現在のようにダウンロード販売などない時代だしエコうんぬんといった配慮もなかったから大ぶりで確かな手応えがあるものが多かった。特にこの「Toy Shop」は手にしてみるとずっしりとした重さがある。

なぜなら一般的なパッケージのようにマニュアルとフロッピーディスクといった同梱内容だけに留まらない「Toy Shop」独特な内容だったからだ。
何しろそこにはしっかりとしたマニュアルと3枚のフロッピーディスク、そして厚紙、竹籤、針金、輪ゴム、たこ糸、風船が入っているのである。

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※パッケージにはマニュアルとフロッピーディスクの他、工作の材料となる厚紙、竹籤、針金、輪ゴム、たこ糸、風船が同梱されている


古参のMacintoshユーザーならどこかでこの「Toy Shop」のことをお聞きになったことがあると思うが、これはMacintoshと当時のドットインパクト式のプリンタであるImageWriterで厚紙に印刷した展開図をハサミやカッターナイフで切り取り、糊で接着して可動式の模型を組み立てるというユニークな製品だったのである。

どのようなものが作れるのか…をざっと列記してみるとアンチークなトラック、メリーゴーランド、日時計、紙飛行機、竹とんぼならぬ紙とんぼ、ジェット改造車、メカニカルな振り子、クラシックカー、重量計、蒸気機関、起重機など魅力的なものばかりである。

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※「Toy Shop」で作るメリーゴーランドの解説ページ


無論メリーゴーランドは回り、起重機は各部位が動作し遊べるのだ!ただし一見オモチャっぽいツールではあるがパッケージにも “Ages 12 Years to Adult” とあるように幼年向きのものではないし事実起重機などの組立やメカニカルな調整などはかなり複雑であるからして大人でも十分に楽しめると思う。というか、お父さんが子供のために「Toy Shop」で何かを組み立てたらきっと子供たちの目はキラキラ輝くに違いない。勿論主な材料は紙だから、それぞれのパーツや本体を好きな色で塗ってみるのも楽しいと思う。

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※「Toy Shop」で作る起重機の解説ページ。きちんと動かすにはしっかりとした調整が必要


私はかなり以前に付属の用紙ではなく別の用紙にディスクに含むデータを印刷し組み立てたことがあったが、製品同梱のパーツをそのまま残して置きたかったので購入時のパーツは現在もそのまま残っている。
デジタルで完結するアプリケーションはそれはそれで良いが、パーソナルコンピュータによるこうした類の楽しみも忘れたくないものである。