まだまだ寒い時期だから、朝早い散歩はなかなか辛い。日が昇らない時間に自宅を出て駅前の公園へと向かう。ラテを連れ、枯れ葉を踏みながら立派な木々の間を抜けていく…。そんなとき、一瞬凍り付くシーンに出くわしてしまった。 

空が白み始め、青と赤のグラデーションに染まる頃に街並みを抜け、大きな公園に入る。そして立派な大木たちに「おはよう」と声をかける。それらは少なく見ても150年とか200年以上は生き続けてきた木々だと思う。 
私は決して信心深い人間ではないが、生あるものとして大先輩であることは間違いなく、挨拶くらいしても罰は当たらないだろう…。それに、大変申し訳ないことだが、たまにはその根元にラテがオシッコをしてしまうこともあるからして…詫びの気持ちもある(笑)。 

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※空が2色のグラデーションに染まっていく早朝に公園に到着する 

この時期、早朝の公園は暗いだけでなく確かに寒い。何しろ土がむき出しになっている箇所では霜柱が立っているし、落ち葉の層にもうっすらと白い物が被さっている。それらをざくざくと踏みながら林に分け入っていく気持ちは、寒いことは確かだが、またすがすがしくもある。 

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※公園の木々の間をラテと抜けていくときには、まだまだ薄暗く外灯が頼りだ 

しかし先日、残念ながらすがすがしいなどとは言っていられない場面に遭遇した。その直後はラテが幾たび私を気遣い、振り向くほど、私の顔は涙で濡れていた…。 

実はラテと公園を後にしようと、駅に続くいつもの坂道を下り始めた。ふと坂道の右側に何やら荷物らしき物が置いてあるのが見えた。 
不思議に…後から考えると私の深層心理ではそれが何かをすでに察知していたようにも思えるが、覚めている現実の感覚としては「何だろう」と近づいたわけ…。その脇を通り過ぎた瞬間「見なければ良かった」と後悔した…。立ち止まったわけではない。通り過ぎただけだ。 
荷物と見たひとつは段ボール箱で、ほんの1秒にも満たない一瞬だったが、箱の中にいた2匹の子猫と目が合った…。合ってしまった。まだ段ボールから自力で出ることも出来ない子猫たちである。 

いい歳をしてうろたえた。「どうしようか」と…。この寒空だから、このまま2,3日放置されれば確実に死ぬだろう。 
しかし、知れたことだ…。飼えるものならこのまま連れて帰りたいが、それはできない。すぐ其処が保健所だから知らせようとも考えたが、まだ朝の6時半である。それに、保健所に通報すればその結末は知れているような気がした。 
この坂道は人通りが多い場所だ。明るくなれば沢山の人たちが通る道だ。そしていくら何でも半日程度で子猫が死ぬとは思えないから…もしかしたらその間に「飼ってやろう」という奇特な人が通るかも知れない…。甘い考えであることは分かっているが、可能性はゼロではないと自分に言い聞かせた。 
保健所に通報するのは簡単だが、それではあの子達は確実に…。 
だから半日待って午後一番にまたここに来てみよう…。通報はそれからでも遅くはないだろう…。 
良いか悪いかはともかく、そんな自分なりの結論を一瞬で出した。 

そのままラテといつもの散歩を続けたが、恥ずかしい話し「見なければよかった」という後悔と、青臭い話しに聞こえるかも知れないが、子猫を捨てた奴への怒りと共に、あの子猫達の幾末を思うとしばらくは涙が止まらなかった。 
また、捨て猫の2匹ごときを助けられない自分に腹もたったが、子猫たちが味わう悲しみと苦しみの数分の一でも、捨てた奴に味合わせてやりたいと…大人げないが心底思った。 

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※夕刻の散歩中、拾った小枝で無心に遊ぶラテ 

昼に、いつもの散歩コースを変更して再びラテとその道に向かった。あれから6時間ほど経っていたが…道ばたに荷物はなかった…。 
良い人に拾われたのか、あるいは保健所に連れて行かれたのか、それは分からない。しかしどちらにしてもあの子猫たちの命が繋がるようにと願うしか私にはできなかった…。 

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※日が傾き、公園の広場に私とラテの長い影ができる。「さて、ラテ帰ろう!」 

その日、心なしかラテは優しかった…。