
iPhone 3G Sの登場でまたまたiPhone熱がヒートアップしそうだ。WWDC関連情報を見ているとそれが開発者向けのイベントであるから当然なのだが、App Storeのアプリ内課金(In-App Purchase)をサポートしたこともありiPhone向けアプリケーション開発が益々ビジネスとして重要なポジションを得ていくという評価が高いし期待も大きい。しかし大切なことを忘れてはいないだろうか。
iPhoneアプリケーションの開発で一攫千金を夢見る開発者は多いだろうし事実予想を上回るダウンロード実績があった製品も存在する。しかし私の回りでは大もうけしたというプログラマや開発企業は絶無である(笑)。まあ個人プログラマが内職のつもりで開発するならともかく、100%ビジネスとして取り組むには相応の覚悟と売るためのノウハウも必要だということだ。
例えばアプリ内課金(In-App Purchase)の導入は歓迎すべきことであるが、それは個人の開発者よりも大手企業の企画に有利に働くと思われるし、そもそもコンテンツそのものがアプリ内課金(In-App Purchase)に値する魅力的なものであるかどうかが問題なのであり、こうした新しいシステムの導入が即開発側に有利に働くと思うのは短絡的であろう。
iPhone 3Gが登場してこの方、私も幾多のiPhoneアプリ開発の企画に頭を突っ込んできたがその開発側の中には大切なことを忘れているとしか思えないケースが見受けられ気が重い仕事も多い…。
はっきり言ってしまえばプログラマはプロクラムをコーディングするのはプロに違いないのだが、企画やら販売といった部分の思惑を軽く見過ぎている人も多いのである。
その第1は「App Storeで販売するアプリは商品である」という認識の低さである。
無論コンテンツを開発して販売するのだからビジネスだという意識がゼロではないわけだが、最近は特に「商品を売るための努力」を無視しているとしか思えない方たちが目につく…。
極論をいえば、ただただiPhoneアプリを開発しApp Storeに登録すれば世界中のユーザーの目にとまって買ってくれるという “幻想” に取り憑かれているようだ。あえて幻想と書いたが、この幻想はApp Storeスタート直後は確かにそうした可能性もあったと思うがご承知のようにApp Storeにこれだけ膨大なコンテンツが日々登場する現状で「作れば売れる」と考えるのはまさしく幻想としか思えない…。予想は期待であってはならないのである。
しかしこの景気が低迷している時代にも着実に売上を伸ばしている商品や企業あるいは店舗があるという。そうした売り場に並ぶ商品がどのように企画され、どんなコンセプトで店頭にならんでいるかをアプリ開発者の方々も今一度勉強すべきだと思う。
売れている商品や会社はそれなりに理由がありそして独自の考え方と企画力で商品開発はもとより、売り場に新しい風を送り込んでいる。
午前と午後では品揃えを全部取り替える店もあるし、とある書店では新刊書と中古本を並べて販売しているケースもあるという。それぞれどのようにしたら客が立ち寄ってくれて商品を認識し、購買意欲をかき立て、商品を手にとってレジまで運んでくれるかを日々研究しているのである。
App Storeで販売してくれるのだから、そうした工夫の余地もないと考えたり、他人任せの安易な考えを持っていたとすれば例え良いコンテンツであっても日の目を見るチャンスは少ないと思わなければならない。
繰り返すが例え150円のコンテンツでも顧客に金を払ってもらうとすれば立派な商品である。そして商品を売るのはビジネスだ。だとすれば闇雲に数打てば当たるという“運任せ”はビジネスに値しない。
古参のマックプログラマの方々にとっては蛇足だろうがここで私が常々アピールしているiPhoneコンテンツ開発ならびに販売の基本中の基本をご紹介してみる。
1)独りよがりのコンテンツであってはならない
ゲームであってもユニークなアプリであってもiPhoneコンテンツを開発する側の多くは個人である場合が多い。無論それが悪いわけではないが、まったくの個人の場合はとかくその仕様全般が独りよがりなものになりがちである。自分がよいと考えたものはすべからく他人にも歓迎されると思いがちである。
基本となるアイデアはもとよりだが、デザインやインターフェイスなどなど使い勝手を含めて可能な限り他者の意見を聞く姿勢が必要だし身近に良い意味で辛口の仲間がいることが望ましい。褒めるばかりの輩は信用してはならない(笑)。
できるだけ回りの人たちの意見を聞き、納得がいくものに仕上げなければならない。「独りよがり」と「ユニーク」は違うのである。
2)ソフト名やアイコンデザインを重視すべし
一般の商品がそうであるようにネーミングとその見映えの工夫は疎かにしてはならない。ネーミングにも重要なノウハウがあるしiPhoneコンテンツのパッケージに該当するアイコンデザインは商品として大変重要である。
問題はそのアイコンデザインの多くが開発者自ら考えているのが現状である。というか、Mac OSの時代からそうしたことは主流だった…。しかし時代は変わっているのであり、いつまでも予算と時間を理由にしているだけでは殻は破れない。
事実App Storeにあるコンテンツの中にはデザインになっていないアイコンも時折目立つ。手段や方法はともかく可能な限りデザインはプロのデザイナーに頼んでみてはいかがだろうか。見映えは第一印象に通じるわけでその程度が低いとその内容まで低く評価されがちだからである。
3)市場への露出、アピールを工夫すべし
App Storeへの登録が完了しめでたくダウンロード販売が可能になったとしても当該コンテンツが目立つ場所に、それも長きにわたって露出することはまずあり得ない。例え幸い話題が集まり販売数が増大したとしてもそのピークは長くても2週間は持つまい…。それが現実なのだ。
なぜなら日々次から次と新しいものが並び、自分が売りたい…見てほしいものは階層の奥に押しやられ目立たなくなる。そして常に新しいものが注目を浴びることになるからだ。したがってApp Storeに登録できたから仕事が終わるのではなく、そこが販売のスタートであると考えなければならない。だからユーザーにApp Store上でコンテンツを見つけてもらうだけではなくリンクの直貼りなどで直接当該コンテンツにたどり着けるように工夫しなければならないのだ。
問題は当該コンテンツの存在と魅力を1人でも多くのユーザーに知ってもらわなければならない。人はその存在を知らなければ買うことができないのだから…。いわゆる営業努力である。
ではどうするか…。自身のホームページで露出するのは勿論だが、友人や知人のブログや業界に詳しいライターの方たちなど人脈をたどってでも評価記事を書いてもらうこと。コンピュータ雑誌やメディア各社などにコンタクトを図り誌面で取り上げて貰うこと。YouTubeなどに動画として紹介ムービーをアップロードすることなどなどとにかく認知度を高める努力をする必要がある。そしてそれもApp Storeへの登録時1度だけではダメで、1週間後、1ヶ月後などなど定期的に行動を起こすことがベターだ。
4)ブランド力をつける
ユーザーは1度だけなら商品の魅力だけで…イメージだけで購入してくれるかも知れない。しかしiPhoneコンテンツも商品なら永続的に当該コンテンツが売れるように…あるいは同じ作者の開発したコンテンツが続けて売れるようにと考えるべきだ。それにはブランド力を付けることを意識しなければならない。
「ブランド力」などというと大げさなことのように思えるかも知れないが、ユーザーを甘く見てはならない。
きちんとアップデートを実施する開発者、万一の場合にサポートもしっかりしている開発者、常に質の高いコンテンツを提供しきちんとした情報を提供してくれる開発者は皆注目しているものだ。したがってリピーターが存在しないようでは商品は売れっこない。
iPhoneは素晴らしいしその魅力を増幅する多くのコンテンツ類登場はこれからもエキサイティングな市場を作るであろう事は事実である。しかし本当にエキサイティングなのは農作物でも自動車でも真面目に物作りに励む人たちが正当に報われることが一番重要であろう。でなければ市場に良い製品が永続的に並ぶことは期待できない。しかしその作り手にもそれだけの高い意識とシビアな認識そしてノウハウと努力が必要なのである。
現在の我々の多くは開発の専門職といったことでなく、コンテンツの企画から開発そして販売にいたるまでトータルに手を染めなければならない難しい時代にいる。しかしそれらをすべて100%のクオリティでこなすことは1人の人間としてもともと無理な相談なのだ。
iPhoneコンテンツの開発もそれが商品であるなら企画から販売までやはりそれなりのノウハウを持った人たちとのコラボレーションが重要になってくると思われる。
プログラマもデザイナーとかクリエーターなどといった専門職の仲間を探し、一緒に新しいコンテンツ開発の企画ができることが望ましい。「1人で作れば売上すべて自分のものだ」と考える人がいるかも知れないが(笑)、そもそも話題になり売れなければ話しにならないのである。
iPhoneのコンテンツ開発ビジネスを一時の泡沫、線香花火で済ませてはならないからこそ、今一度「商品を売る」ということはどういうことなのかについて再認識し事に取り組んでいただきたいと願うものである。