
Appleの表看板であるスティーブ・ジョブズ氏が登壇しないMacworld Expo 2009の基調講演がどういうものになるのか、どのような新製品が出るのか出ないのか…等々を心配しながら見守っていたがAppleのワールドワイドプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントであるフィル・シラー氏はよくやったといえるのではないか。
拍手に迎えられたフィルはこの「基調講演に人が集まってくれたことを感謝する」と照れた感じでスピーチを始めたが、その第一印象はだいぶスマートになったということだった(笑)。
かなり早口でもあり、そのスピーチは私などの英語ダメな人間にとってジョブズより聞き取りにくいのが残念だが最後までトラブルなどに見舞われることなく無事大役を果たした。


※壇上にフィル・シラー氏が登場し基調講演が始まった。フィルの人なつっこいキャラはジョブズと対極で面白い
フィルはお約束のApple Storeの動向から話を進めた後、話をMacにフォーカスし3つの発表を行うと述べた。
最初の話題は「iLife ‘09」だった。
早速「iPhoto ‘09」の解説から入ったが顔認識機能、GPSタグにより場所ごとに写真を分類できる機能さらに美しくエキサイティングになったスライドショー機能などが際立っていた。それらをフィル自らデモしながら分かりやすく解説する。
そういえば、要所要所で会場から拍手やかけ声がかかる。
拍手のタイミングなどを深読みすれば、来場の関係者らがフィルの基調講演を盛り上げるため、最大の応援をしているように思え私には微笑ましかった。
その後「iMovie ‘09」のデモはビデオアプリケーション担当のランディ・アビロス氏がデモを行ったが、画像の手ぶれによる揺れを自動的に軽減できる「手ぶれ補正」機能など現行バージョンより大きく進化した製品であることが伺えた。

※iMovie ‘09」のデモを行うAppleビデオアプリケーション担当のランディ・アビロス氏
「GarageBand ‘09」にもユニークな機能が搭載された。それは手軽にギターやピアノを習うことができるレッスン機能である。その上に有料だが有名アーティストのレッスンも受けられるとのこと。

※「GarageBand ‘09」にはレッスン機能が搭載された
2つ目は「iWork ‘09」である。「Keynote ‘09」もより魅力的になったしiPhone/iPod touch向けKeynoteリモートアプリ「Keynote Remote」も素晴らしい。
「Page ‘09」「Numbers ‘09」と解説は続くが「iWork ‘09」は本日から発売開始と言う説明がある。
さらにこの「iLife ‘09」と「iWork ‘09」および「Mac OS X Leopard 」をひとつのパックにした「Mac Box Set」が発売される。これは「iLife ‘09」を使うシステム条件に「Mac OS X Leopard 」が不可欠だからでもある。
続けて「iWork ‘09」で作成した文書を手軽に共有できる「iWork.com」の紹介もあった。
3つ目はやっとハードウェアだ…。それはユニボディを採用した17インチ MacBook Proだった。
革新的なバッテリーにより最大8時間の連続使用が可能でオプションとして非クリア液晶や2.93GHzのプロセッサを選択することもできるという。なおメモリは最大8GB。
この新しい17インチMacBook ProはMacBook Air同様バッテリーがユーザー側では取り外しや交換ができない。その理由についてビデオで登場したAppleのダン・リッチノ氏はスペースを有効に使い、より大きなバッテリーセルを収納するための方策と説明。
フィルは最後に “One last things” とiTunesに関する発表を続けた。
それはこれまで一律0.99ドルだったものを0.69ドル、0.99ドルそして1.29ドルの3種類になるとのこと。そしてDRMフリーサービスの説明後、iPhone 3Gの3Gネットワークを使ってiTunes Storeから楽曲を購入できるようになったと説明した。
最後はお決まりのスペシャルゲストの登場だが、今回は渋いも渋い…トニー・ベネットがバンドをバックに熱唱した。

※スペシャルゲストは歌手のトニー・ベネットだった
最後の曲は邦題「想い出のサンフランシスコ」だったが、今回Macworld ExpoにAppleが出展するのは文字通り最後であることを考えるとなかなか意味深な選曲だったといえよう(笑)。
フィルは観客が静まるのを待って関係者やスタッフらに感謝の意を延べて去った。

※トニー・ベネットを拍手で送り、笑顔を見せるフィル・シラー氏
フィルの基調講演は約1時間30分ほどになったが、一部を除いてひとりでしゃべりまくった。その姿は私には十分な練習を積んだ自信と共に大役を無事に果たさなければならないという気概が見えた。
そしてジョブズと同様に手元に資料などを一切持たずにスピーチを続けたのは見事だったが、しばし視線を舞台の下に落とすのが見受けられた。そこにはKeynotoによるプレゼンの次ページがモニターされていたのかも知れないがストリーミングでは確認できなかった。
またジョブズのプレゼンと違うと気づいた点はスクリーンに対して観客の視線を誘うアクションがいくつか見られた。しかしジョブズはスクリーンを自身が持つリモコンで送りながらもそれにはほとんど註釈のようなポーズは見せなかったと思う…。
ともかくフィル・シラー氏によるキーノート・スピーチ、Appleにとって最後のMacworld Expo基調講演が終わった。
一部には最後にスティーブ・ジョブズ氏が一瞬でも登壇するのではないかという推測もあったようだが、私はそれは無いだろうと見ていた。なぜならジョブズが出でしまってはどんなにフィルが上手にスピーチを終えたとしても大衆の興味はジョブズに向かってしまい、せっかくのフィルの努力が希薄になってしまうからだ。
自身の健康面もあるだろうが、そうした気遣いができないジョブズではないと思うし、事実フィルは無事に大役を果たしたといえよう!