
前にも書いたが、私は散歩の途中で魅力的な雲が漂う空を観察するのが好きだ。印象的な空を発見すると写真に撮るのは勿論、帰宅してからVue 6 Infiniteでそれを再現することに挑戦するのも楽しみである。本書はそうしたユーザーにもお勧めの一冊なのだ。
本書の原題「THE CLOUDSPOTTER’S GUIDE」、邦題「雲の楽しみ方」は英国でベストセラーになった一冊だという。
雲の魅力についていまさらあれこれと論ずる必要はないかと思うが、子供の頃に美味そうなコッペパンにも見える、あるいは動物の形にも見える雲を見上げて半日を過ごした経験は多くの人が持っているに違いない。
私も孫悟空の「觔斗雲(きんとうん)」や小学生のとき夏休みに学校の校庭で見た鰐淵晴子主演「ノンちゃん雲に乗る」の影響か、雲が大好きになった。そもそも青空も素敵だが、いつもいつも青一色の空なんて飽きるし、適切な雲がなければ荘厳な夕日のシーンも変わってくる…。
…それにしてもノンちゃんは奇麗だったなあ(笑)。
河出書房新社刊「雲の楽しみ方」表紙
雲の中でも一番好きなのは形を大きく変える積乱雲だが、そもそも雲って何だろうか?
少年時代に科学雑誌などで「雲の正体は水だ」と説明されてもまったく納得できなかった(笑)。しかしその後、雲があのように真っ白に見えるのは水は水でも、1立方メートルあたり約100億個もの細かな水滴が集まり、この無数で微少な水滴の表面が太陽の光を拡散させるために雲はぼんやりとした白色に見えることを納得した。そして本書にも書かれているが、中程度の大きさの積雲でもその水滴の重さは膨大なものであり、例えていうなら象80頭分ほどもあるという…。
子供心にはそんな重たいものがなぜ空に浮かぶのだろうと不思議に思うと同時に、それなら「僕だって空を飛べるのではないか…」と勝手な解釈をしたものだ(笑)。
そんな少年だったからその後も雲についていろいろと書かれた本も読んだが、美しい写真集は多々見つかったものの分かりやすい解説本は少なかった。後はどうしても気象学といった専門的なものになってしまう。
本書はその点大変ユニークな一冊である。豊富な写真と共に、多くのエピソードとユーモアを交えた科学エッセイガイドであり、堅苦しいものでなく雲に関するアートと科学を紹介する一冊でもある。勿論雲の基本形となる10種類の外観とその発生のメカニズム、そして雷や虹の仕組みなどについても解説されている。
それらの中に、思想家や作家の言葉や神話と宗教、芸術と建築、文化や事件といった様々なエピソードが語られており、自然に読みふけってしまう。
ところで雲…それ自体は素敵だが、雲を含めて天候を欲しいままにできればそれは世界を征服できることになる。そんなテーマの映画もあった…。
確かに梅雨時には晴れ間が欲しいし、猛暑が続けば一雨欲しい…。また作物も天候の変化を正確に読めるだけでなく操作ができるならメリットも多いはずだ。しかし何事も裏の部分が存在する。本書によればあのベトナム戦争時にはアメリカ軍による雨を降らせる実験が行われたという…。勿論軍事作戦的に有利な環境を人工的に作り出そうとしたわけだ。そのために7年間にわたりラオス、ヴェトナム、カンボジア一帯の雲に化学物質をまいていたという。
雲のコントロールもひとたび使い方とその方向を間違えれば大変なことになる。やはり我々はVue 6で天空操作を目指す程度が平和で良い…。
愛犬と散歩の途中で出会った魅力的な夕焼け空
ということでVue 6で魅力的な天空をシミュレーションすることに魅力を感じているユーザーなら本書は単に楽しみだけでなく、雲の誕生の秘密や性質といった科学的な現実を知る手がかりになる。そしてなによりも自身がVue 6で作り出す…作り出そうとしている雲に関する知識を知っておくことができるなら、興味もより増すに違いない。
Vue 6 Infiniteで試みた積雲の空(上)と荘厳な夕日(下)
また靄(もや)や霧、巻層雲に現れる魅力的な気象光学現象などの基本的表現も可能であるVue 6ユーザーならばこそ、本書は楽しい教科書になるのではないだろうか。
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雲の楽しみ方〜THE CLOUDSPOTTER’S GUIDE
2007年7月30日 初版発行
著者 :ギャヴィン・プレイター=ピニー
訳者 :桃井美子
発行所 :河出書房新社
コード :ISBN978-4-309-25211-7
価格 :2,400円(税別)
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