
写真撮影の出来は屋外・屋内をとわず一般的に常に明るさに左右されると考えがちだ。特に室内における商品撮影はある種の照明は不可欠だしライティングひとつ変えることにより写真をまったく違った雰囲気にすることもできるのは事実だが、照明が明るければ明るい写真が撮れると単純に考えるのは早計である。
撮影のための照明…というと一般的に眩しいほど強く明るい照明が必要と考えるが、それははっきり言って間違いだ。
例えば天候に恵まれた旅行中の写真でこんな体験はなかっただろうか…。
それはピーカンの素晴らしくよい天気の下、太陽の光も燦々と輝く野外、それも逆光で撮ったわけでもないのに写真がなんだか暗めで不自然な結果になったことはないだろうか…。それにピーカンの天気の際、順光による撮影だと強い陰影が生まれてしまいがちなのだ。
乱暴にいえばその秘密はデジタルカメラのオート撮影にある。昨今のデジカメはご承知のように周囲の明るさに応じて自動で露出およびシャッタースピードを計算し、ベストな写真を撮るよう設計されている。
したがって例えば真っ白な背景スクリーンの前に撮影アイテムを置き、明るい照明を当ててオート撮影すればデジカメは「周囲が明るすぎる」と判断し撮影時暗めに自動調節してしまうのである。
その暗めに撮れた結果を見て我々は「これは照明が暗いからだろう」と一層明るい照明を用意したとしてもその結果は同じであり良い結果は得られない。この理窟から野外での写真もピーカンの天気のときより薄曇りのときの方が色合いも自然で明るい写真が取れた経験をお持ちの方も多いはずだ。
要はこの理窟を商品撮影にも取り入れればよいことになる。
それから特別な場合を除けば、商品撮影はいたずらに影を生じさせないようにする必要がある。こうした用途を含めプロフェッショナルはともかく我々は昼白色タイプの蛍光灯照明を使うのが安全だ。
蛍光灯はご承知のように影が出来にくく白熱電球のように熱も持ちにくいから扱いやすい。そして撮影する範囲が狭いなら60Wとか100Wの電球ひとつでも何とかなる…。
前回の「撮影スタジオ篇」でご紹介した組み立て式のアイテムなどを使えれば理想的だが、ここで白い用紙をバックシートとして配置しただけを想定して話を進めれば蛍光灯のスタンドの前に何らかの半透明の紙や布で遮断しディフューザー代わりにできればベストだ。そして照明もまずは1灯からテストをしてみると良いだろう。小規模な範囲の撮影ならそもそも照明は1灯で済むはずだ。
ただし熱を帯びにくいといっても照明器具はそれなりに熱くなるので燃えやすいものを近づけてはならない。
なおこの場合のディフューザー(Diffuser)とは撮影時、フラッシュや照明の光を拡散させて被写体の陰影をなくすためのツールである。
ちなみに私は本格的な撮影時は40cm×40cm大の撮影用アンブレラライトを常用している。
※スタンドに下がっているのがアンブレラライト。アームの反対側についているのはバランスを取るために重しを入れたバッグ
これは100ワット形(消費電力21W)の昼色光蛍光ランプ1灯を使ったものだが使わないときには傘をたたむような感じで収納可能な便利な製品だ。
※アンブレラライトは使うときに傘のように広げ、収納時にはたたむことができる
このアンブレラライトを専用のライトスタンドとライトアーム(イタリア/マンフロット社製)を使ってその都度適切なライティングをできるようにしている。
ただし練習用なら蛍光灯(昼色光タイプ)の電気スタンドで十分応用可能だが、問題は撮影するアイテムにできるだけ影をつけないライティングを工夫してみよう。
そして必要なら補助照明の意味で2つ目の照明を使うのもよし、レフ版(光を反射させ間接光の役割をさせる通常は白い材質を板状にしたもの)の代わりとして真っ白な用紙を二つ折りにでもしてカメラの視界に入らないように注意をしながら撮影アイテムの左右などに置く工夫もしてみるとよい。
さて照明の準備が整ったらここがキモといった撮影時のデジカメ設定についてのお話しである。
細かなことに足を突っ込むとそれこそ絞り、シャッタースピードひとつで1回分以上の解説をしなければならなくなるからそれは避けたい(笑)。
ここではまずホワイトバランスの意味とお手持ちのデジカメでそれを合わせるやり方を取扱説明書を見て使えるようにしていただきたいことが第一だ。無論最近のデジカメはホワイトバランスも自動で調整する機能があり、それこそオートで撮って色合いに大きな違いが生じなければまずは自動でも良いが、カメラを扱う者にとってこのホワイトバランスうんぬんということは避けて通れないので1度はじっくりとその意味を把握すべきだ。
被写体のセットが出来、照明も用意できたとなれば早速デジカメで撮影するわけだがデジカメは絶対に三脚を使ってセットすることを守りたい。無論それは手ぶれを防ぐ意味もあるが、フレーミングを固定するという目的もある。
そしてここでデジカメの設定を一般的なオート撮影モードで撮るとデジカメの個体差もあるものの大概が暗めの写真が出来るあがるのではないだろうか…。
※前記の撮影環境時にデジカメのオート撮影モードで撮った写真。全体が暗い
その解決策だがオート撮影ではなくモードダイアルを持つデジカメなら通常 “P” と表示されているプログラムオートによる撮影を試してみよう。
※プログラムオートは撮影モードダイアルを有しているデジカメだと大概 “P” と表記されている
プログラムオートとは、シャッタースピードと絞り(F値)はデジカメ側で自動設定するものの、別途メニューで好みの機能を設定できるモードだ。
この辺の操作はデジカメ毎に違うので手持ちのカメラの取扱説明書を熟知し、基本的な操作とその意味を知っておかなければならない。
例えばここで露出をプラス0.5とか1.0に変えて(露出補正)撮影すると全体的に明るい写真が撮れるはずだ。したがって前記したように明るい写真を撮るたるに眩いばかりの照明が必要なわけではないのである。
※前記の同じ環境下でプログラムオート設定、露出補正を+1にして撮影した例
ただし露出をどの程度補正することがベストなのかはそのデジカメや撮影環境により変わってくるので最初はいくつか補正に段階をつけ、メモを取りながら撮影し適正な値を把握することが必要だ。
また最近のデジカメにはブラケット撮影といったモードを持っている製品があるがその機能を使ってみるのも良い。
これは1回のシャッター押しで露出の違った複数枚の撮影ができるモードである。
このモードではシャッターを押すことで露出の違う3枚とか5枚(カメラの機能による)が1度に撮れるので露出による違いの比較が容易なだけでなく、内から一番よい写真を選べば良い。
よい写真を撮るのは確かに易しくはないが大切な事はとにかく沢山写真を撮って自身で「なぜこうなるのか」「なぜそうならないのか」を考えてみることではないだろうか…。