ここのところAppleのタブレットマシンの噂が現実味を増している…。それも来年といっても来月1月末にスペシャルイベントが開催され発表されるという話があり、その名称は iSlateあるいはMagic Slate ではないかという噂も飛び交っている…。

 

近年AppleはiMacを機縁にしてiBook、iPod、iPhoneとプロダクト名に “i” を付けてきた。その他にもご承知のように iLifeに含まれるiMovieやiDVD、iPhotoそしてiTunesと “i” を頭に付けたプロダクトは数多い。
もともとiMacの “i” は “internet” を意味する名付けだったという。その後1999年、iMacの成功を祝う意味からかAppleに復帰後のスティーブ・ジョブズはそれまで使っていた「暫定CEO」の役職名を自ら 「iCEO」と称するようになった経緯がある。その “i” とは無論 “interrim (暫定)” を意味する。

これだけ使われてきた “i” だし、Appleはすでに “iSlate” というドメイン名も取得しているという話からして新しいタブレットMacの名はそのまま “iSlate” という名称が使われるのでは…と考える人たちもいる。
一方で最新のマウスの名が “Magic Mouse” とこれまでにない “Magic” という名称が使われたことから “Magic Slate” では…という推測をする人たちもいるという。

私は “Magic Mouse” をレポートした際に今更 “Magic” という名は古くさいと批判した。それはAppleの過去…特にあのビル・アトキンソンに関係したあれこれにこの “Magic” という名が目立ったからだ。
HyperCardの裏コマンドに”マジック”というのがあったはずだし、アトキンソンがAppleを退社して新たに設立した会社名は「ジェネラルマジック社」だった。そして決定的なのはHyperCard以前にアトキンソンはAppleで「Magic Slate」という研究プロジェクトを持っていたという事実がある。
それらはアトキンソン自ら1983年に起案されたものだったが、ポータブルコンセプトだったため、小型バッテリーはもとよりパケット無線技術、文字認識、音声認識、フラットディスプレイ、筆圧ペン、イメージスキャナなどなどその時代を先駆けたハードウェアやソフトウェア仕様は当時の技術が追いつかずプロジェクトは実現せずに終わった。
いま思えばその「Magic Slate」はまさしくタブレットマシンであり、アラン・ケイが夢見たダイナブックや後にジョン・スカリーが未来のパーソナルコンピュータとしてコンセプトを描いたナレッジ・ナビゲータの一部を彷彿とさせるものだったといえよう。

ともかく「Magic Slate」の開発を断念し、技術の進歩を待たなければならないことを悟ったビル・アトキンソンが既存のテクノロジーで可能なことを…と考えた結果があのHyperCardに終結したことになる…。
さらにその「Magic Slate」という名はビル・アトキンソンとは無関係ながら1984年に登場した同名のグラフィックソフトにも使われていることもあり、私には今更というか古くさいというニュアンスが強いのである。
それとも新しく登場するタブレットマシンが「ビル・アトキンソンの夢」を実現する…といったコンセプトなら話は別だが(笑)。

ただし最大の疑問というか興味はそのタブレットの名称ではなく機能であろう。
7インチから10インチほどのマルチタッチディスプレイという噂が強いが、それが単に画面が大きいiPhoneだというのなら私はまったく興味がない…。
なぜなら長い間、外出先で「これ一つあればすべて済む」といったガジェットを探し求め、歴代のPowerBookやiBookは勿論、Newton、ザウルスなどなどを使い続けてきたもののそれらは単体でそうした目的を果たすことはできなかった。

今思えば笑い話だが、Macintoshフリークたちは私も含めて出かける際に携帯電話とPowerBookそしてシャープのザウルスを持ち歩くという時代があった。なぜならそれぞれ単体だけでは日常の多様な要件に答えることができなかったからだ。
しかしやっとポケットに入るサイズで様々な目的に沿った実用的なガジェットが登場したのである。無論それはiPhone 3Gだ…。

したがって単に画面サイズが大きく “見やすい” とか、”ソフトキーボードが大きくて入力しやすい” といった類の変化なら私にとってその仕様は進化ではなく逆行することになり必要ないものとなる。
“iSlate” なのか “Magic Slate”なのかはともかく、Apple初めてのタブレットが出るとすれば当然のことながらサイズ面の利点だけではない…iPhoneでは出来得ない “新しい何か” を体現させてくれるものでなければならないと思っている。

さて果たしてAppleからのお年玉は出るのだろうか…。そしてそれは私たちにどのような夢を見させてくれるのだろうか。
正式発表が楽しみではある。

【参考資料】
・アスキー出版局「マッキントッシュ伝説」斎藤由多加著
・アスペクト社刊「アップル・コンフィデンシャル 2.5J」オーウェン・W・リンツメイヤー+林信行著