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北大路欣也主演時代劇ドラマ「三屋清左衛門残日録」DVD雑感

2020年3月20日

 2016年、2017年、そして2019年にテレビドラマとして製作された北大路欣也主演「三屋清左衛門残日録」DVD3巻を購入した。この「三屋清左衛門残日録」の原作はあの藤沢周平でありこれまでにもNHK連続ドラマとして仲代達矢主演作品があり、これまた時に鑑賞するという「三屋清左衛門残日録」ファンの一人である。ただし先ほど時代劇チャンネルで放映された最新作に関してはまだ見ていないので今回の話しには含まない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに藤沢周平の原作についてはすでに16年前に当ブログで感想を記しているし、仲代達矢主演作品については2008年にご紹介している経緯がある。それを踏まえて今般観た北大路欣也版の感想を記してみたい…。

 まずは、どのような映画やドラマもそうだが、最初に観た作品の印象は強く、後に別のキャストでドラマが作られたとしてもそれを心から評価することはなかなかに難しい。

 例えばこれまたテレビドラマだが池波正太郎原作の「剣客商売」がドラマ化されたとき主演の藤田まことに違和感を持った。小説のイメージとはかなり違うと思ったからだが、観ていく内にその違和感が感じられなくなったものの藤田まことが亡くなり新たに北大路欣也主演のドラマが始まった。しかし北大路欣也の演技がどうのこうのでは無くこれまで己の中で作ってきたイメージが壊れていく不快さにそのシリーズは見なくなった。

 

 そんなこともあったから北大路欣也版の「三屋清左衛門残日録」をおそるおそる観たわけだが、これは不思議に違和感がなく楽しめた。逆に仲代達矢版とのキャストの違いやシーンの作り方などの比較をしながら楽しんで観ている自分がいた。

 共演者たちは優香、渡辺大、中村敦夫、麻生祐未、伊東四朗、栗塚旭、寺田農、笹野高史、金田明夫、戸田菜穂、伊武雅刀、原田大二郎、高橋長英らである。

 

 今更だが、ドラマ化は原作と寸分違わずに…という例はほとんどない。文章と映像表現の違いと言えばそれまでだが、脚本の出来不出来やカメラワーク、そしてキャストの演技はもとより大道具小道具の出来映えといったことも時代劇だからこそ気を配ることが大切なのだ。

 

 「日残りて昏るるに未だ遠し...」。時代は江戸時代、家督をゆずり隠居の身となった元用人の清左衛門。 もっと悠々自適・浪々の日々を過ごせるかと思っていたが、いざ隠居となると開放感とは裏腹に世間から隔てられた寂しさと老いた身を襲う若い頃の悔恨...。しかし藩は紛糾の渦の中にあり、清左衛門を放ってはおかなかった...。

 

 というシチュエーションでストーリーは展開していくが、清左衛門が隠居したのは51歳のときのようだ。となれば私はすでにその年齢を遙かに超えている。しかし小説とはいえ、そして自分は用人を勤め終えた清左衛門のような器量を持っているとは考えていないものの、50を過ぎたひとりの男の生きざまがこの歳になって読み返すと怖いほどよく分かる。

仕事のこと、出世のこと、恋や友人たちのことなど、時代は違っても清左衛門の生きざまの中に我が身を置いても違和感を感じない歳になったと言うことなのだろうか。

 

 いつの世も人は出世を願い、地位を求めて争い苦悩する。しかしある年齢になるとフトそんなことはどうでもよいことに思え、数十年もの永きに渡った仕事漬けの日々がほんの一瞬であったことのようにも思えてくる。「光陰、矢の如し」とはよく言ったものである。

その中には楽しい思い出もあるものの、思い出す度に怒り涙することもあり、後悔の念がふつふつと湧いてくることもある。

 無論「三屋清左衛門残日緑」は小説であるが、その人間模様が大変よく描かれているので自然とその心地よい藤沢ワールドに引き込まれていく...。

 

 さて北大路欣也は申し上げるまでもなく大スターであり時代劇においてもキャリアは長い。したがって両刀を携えた武士の立ち姿も実に様になっている。なにしろ昨今の時代劇の中には着物の着方が酷かったり、殺陣もいいかげんだったりと粗が目立つものもある。業界でも質の良い時代劇を作るノウハウを後世に残そうと努力している人たちもいるそうだが、なかなか建屋ひとつ取っても史実にあったものを用意するのは難しくなっていると聞く。

 

 その北大路欣也版「三屋清左衛門残日録」だが原作を同じくするからして仲代達矢版とストーリーが同じなわけだが役者が違い監督や脚本家が違う面白味を味わっている。

 時代の進化から映像が綺麗なのは素晴らしいが作る方は困難を極めるに違いない。そして鬘ひとつとってもとても自然でありストーリーに無理なく没頭できる。

 また北大路欣也版は建屋の表現が素晴らしい。

 例えば主人公たちが行きつけの料理屋「涌井」の店内の様子などはとても自然で良い。仲代達矢版は「涌井」の内部についてはほとんど映していない。暖簾が下がる入り口前後と主人公たちの座す客間だけだが、北大路欣也版では店の規模の一端が分かるほど他の客たちの描写も丁寧に描いている。当時のこうした場所はこんな風に作られていたんだろうなあと納得のいく出来だ。

 

 登場人物たちの中で特に興味があったのが主人公とガキの時代からの親友であり町奉行・佐伯熊田演じる伊東四朗だ。仲代達矢版では財津一郎がとても良い味を出して好演していたので気になった訳だが伊東四朗の熊太もとぼけた感じが出ていてなかなか良かった。

 ただし仲代達矢版がNHK「金曜時代劇」全14話の連続ドラマおよびおよびNHK「正月時代劇」枠の続編 だったのと違い、北大路欣也版は2016年と2017年、BSフジ開局15周年記念特番としてテレビドラマ化され、かつ2018年2月3日に時代劇専門チャンネル開局20周年記念番組として第3作『三十年ぶりの再会』が放送といった具合に3編で構成されているから連続ドラマほど詳細なストーリー展開は描けないからか少々物足りない部分もあるが全体的にそつなくエピソードが選ばれている。

 

 ただひとつ気に入らない…というか引っかかるのは音楽(栗山和樹)だ。ドラマを再生した途端に流れるテーマ音楽は仲代達矢版のそれを思わせる同質の "音" で始まる。一瞬同じ三枝成彰によるものなのかと思ったが違った…。

 意識して仲代達矢版のテーマ音楽と似せたというならともかく、せっかくの新版なのだからこれまた仲代達矢版のそれを感じさせるようなものはどうかと思う…。

ともあれ質の高い時代劇が少なくなったいま、この北大路欣也版「三屋清左衛門残日録」はキャストは勿論、制作陣の意気込みと気概を感じる良質の作品であった。

 

 

 

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